「じゅうぶん豊かで、貧しい社会 -理念なき資本主義の末路ー」は、ケインズが提唱した経済の理想を基に、現代の世界(主にイギリス)の経済状況がどうなっているのかを説いたものです。
著者のロバート・スキデルスキーは、ケインズと同じイギリスの経済学者であり、ケインズ主義に関する著書を大量に書いている、ケインズ研究の第一人者です。
前提となるケインズ経済学
ジョン・メイナード・ケインズは1900年代前半のイギリスの系ザク学者です。
1935年に発表した、「雇用・利子および貨幣の一般理論」において、公共投資(財政政策)・利子率の引き下げ(金融政策)による経済の回復を主張し、当時大不況であったアメリカのニューディール政策の元になりました。
本書のテーマ
ケインズは資本主義が進んでいくと貧富の差はなくなっていき、仕事に追われることのない豊かな社会が訪れると言いましたが、現在社会では、資本主義が人間の欲望を際限なく増やしていき、貧富の差はどんどん広がっている、というのが大事なテーマです。
トマ・ピケティの資本論に近い内容のテーマです。
経済的な発展が人を幸福にするのか→そもそも幸福とは何か→幸福で発展を図ること自体がおかしいのではないか等、だんだんと哲学や倫理学の方向に話が進んでいきます。
ちょっとテーマが抽象的になりすぎて、著者の言いたいことがぼやけてしまっている感はありますが、現代経済の行き先の不安感に一石を投じた、読み応えのある作品です。
そもそもケインズやアダムスミスなどの有名な経済学者に関する知識がなければ、かなり読み解くのが難しいレベルの本なので、読み終わるのにかなり時間がかかることを覚悟して読むことをオススメします。
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