リーマンショックが起こることを見抜いて大儲けした人たち「世紀の空売り」より

世紀の空売り 投資・金融・会社経営
©マイケル・ルイス/文藝春秋

「世紀の空売り」は、いわゆるリーマンショックが世界経済に大打撃を与えた陰で、市場の暴落に賭けることで大儲けをした実在の人物の実在の出来事について書いた本です。

 

リーマンショックを引き起こす元となったリバースモーゲージ債に問題があり、それを利用して大儲けしていたアメリカの投資銀行に問題があることをいち早く見抜いた人達は、まさに天才です。

著者:マイケル・ルイスについて

この本の著者であるマイケル・ルイスはアメリカの投資銀行のソロモンブラザーズで働いていた、元エリート銀行員です。

投資銀行というのは、日本でいう証券会社に近いものですが、年俸が数千万円~数億円あり、通常の銀行よりはるかに高い地位である点で、日本の金融機関の感覚とはだいぶ違います。

その投資銀行をやめて、「ライアーズ・ポーカー」で作家デビューした異色の経歴の持ち主です。

自身の経験を生かした、株式、債券、金融機関等を題材としたノンフィクションの作品が人気を博しています。

特に、ブラッド・ピット主演で映画化された「マネー・ボール」や、本書を原作として映画化された「マネー・ショート」はとても有名です。

リーマンショックとは?

本書を読むにあたって、まずリーマンショックに関する知識が必要です。

当時、アメリカの土地価格は上昇の一途をたどっており、家を買って数年後に売れば、利益が出るような状況でした。

それを利用して、数年後の買い替えを前提に、低所得者層が住宅ローンを組むことが可能となりました。

それが、サブプライムローンと呼ばれるものです。

サブプライムローンを投資債券として、投資家に売り出したのが、本書でよく出てくる言葉、モーゲージ債です。

サブプライムローンは、土地が値上がりしたら売却より返済されてしまうため、モーゲージ債は、すぐ償還されてしまうという欠点を持っていました。そのため、他の債券と組み合わせて、販売することで、高い利率を維持しつつ、償還のリスクを軽減しました。

ところが、土地価格の上昇が止まると、ローンの返済が出来なくなる人が続出します。当然モーゲージ債は暴落し、他のまとめ売りされていた債券も合わせて暴落、世界中の投資家が大損することとなります。

そして、アメリカの5大投資銀行の一つであったリーマン・ブラザーズが経営破綻し、債券だけでなく、世界中の経済が大打撃を受けることとなります。

これが、いわゆるリーマンショックです。

あらすじ

本書の主人公である、アイズマンが投資の仕事に関わることになったことから、話は始まります。

アイズマンはモーゲージ債の草創期から、当該債券の安全性に疑問を持ち、調査を行い続けていました。

もう一人の主人公、マイケル・バーリもまた、モーゲージ債の危険性に気づいた人物です。

バーリは、アイズマンと同様にモーゲージ債の危険性に気づくと同時に、どうすればこの商品を空売りして儲けられるかを考えます。

そこで、彼はCDS(クレジットデフォルトスワップ)に目を付けます。スワップ(引換取引)とありますが、内容はスワップではありません。本書の中でもCDSに関する説明はありますが、一応説明します。ある債権1億円分が10年以内にデフォルト(不履行)する方に賭ける人Aは、賭けの相手方Bに毎月100万円支払います。実際にデフォルトした場合はBはAに1億円支払います。

問題は、サブプライム・モーゲージ債に対するCDSが存在しなかったことと、サブプライムモーゲージ債自体が1兆ドル市場になってしまい、とんでもない金額の賭けとなるため、ギャンブルの受け手がいないことです。

あの手この手を使い、大手金融機関とCDSを締結することになります。

一方アイズマンの方でも、リップマンという男との出会いで、CDSによる賭けを知ることとなります。

最初人々は、サブプライムモーゲージ債がデフォルトするとは考えてもいませんでした。CDSを買うことが理解できず、アイズマンたちをバカにします。

さて、この後、サブプライム・モーゲージ債がどうなるのかは、世界中の人が知るところであります。この後アイズマンたちがどうなるかは、明らかなのですが、その間にも様々なドラマがあります。

その紆余曲折、金融街の闇の深さが、この本の一番面白いところですので、ぜひ読んでいただきたいです。

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