文明崩壊が起こるとしたらどんな原因かを考察

ナショナルジオグラフィック 文明崩壊 ドキュメンタリー
©日経ナショナルジオグラフィック社

ナショナルジオグラフィックが撮影した「文明崩壊」のDVDは人類学者ジャレド・ダイアモンドやその他の科学者へのインタビューを元に、未来の世界の様子を描いたものです。

ジャレド・ダイアモンドは、著書「銃・病原菌・鉄」でピューリッツァー賞を獲得した世界的に有名な文明学者です。

 

今から200年後の未来の砂漠を走る1台の車。

これがこのDVDの物語の始まりです。

文明は崩壊し、人類は昔の農耕生活へと逆戻りしています。

どのような要因で我々の文明は崩壊してしまったのか、未来の人々がそれを探る冒険の開始です。

 

文明崩壊の要因1 水不足

アメリカ南部にかつて存在したアナサジ族がなぜ滅びたかを調べることが、文明崩壊のヒントとなります。

アナサジ族は西暦600年頃にチャコと呼ばれる巨大な都市をつくっていました。

砂漠の真ん中にあるその都市は、雨水を有効利用した灌漑事業により大きく発展しました。

ところが、突然の大干ばつにより全く雨が降らなくなってしまいます。

その大干ばつは、なんと50年も続くこととなります。

それによりアナサジ族の社会が崩壊しました。

人々はチャコを離れていきました。

 

所変わって、現在のカリフォルニアは、巨大な農場の経営で発展しています。

しかし、あまりに大規模な農業の発展により、農作物に使う水が不足し、井戸を掘っては枯らして、ということを繰り返しています。

 

カリフォルニアだけではなく、実は全ての大陸で水をめぐる争いは現在でも起きています。

 

日本で生活していたら、水に恵まれており、あまり予想もしないことかもしれませんが、もしかしたら、アナサジ族と同じように水不足が、現在の文明の崩壊の原因となるのかもしれません。

 

文明崩壊の要因2 石油不足

現代において、もっとも発達した科学技術の一つは、輸送技術です。

物をより遠くへ、素早く運ぶため、船、自動車、電車、飛行機、などさまざまな乗り物が次々と開発されました。

現在、20億台もの自動車が世界にあふれています。

輸送技術が発展した最大の要因は、動力となるエネルギーが無料同然で手に入ったからとも言われています。

それが石油です。

 

かつて最も栄えた文明として有名なローマ帝国では、軍事力の拡大により他国への侵略を進めていきました。

やがて、征服するべき肥沃な土地がなくなっていき、ローマ帝国はエネルギー不足に悩まされるようになります。

それが、ローマ帝国の滅亡の大きな要因の一つと言われています。

 

この、DVDでは、科学者たちの意見として、あと数十年で石油が枯渇すると語っています。

これについては、むかしから常に議論があり、本当にいつ石油が枯渇するのかは、誰にも分かりません。

しかし、絶対に起こらないとは誰もいえないのもたしかです。

太陽光、風力などの代替発電により石油の分をまかなおうと思っても、巨大な設備を必要とするため、簡単には補えるものではなく、また費用も大きくかかってしまうため、各国は一気に転換政策を図れないのが現状です。

もっと効率的な発電方法として原子力発電が議論の対象にあがりますが、その危険性は日本人であれば痛いほど分かっているはずです。

原子力発電は甚大なトラブルを巻き起こす可能性があると同時に、廃棄物の処理に莫大な費用がかかります。

また、原料となるウラン自体が将来不足することも考えられます。

エネルギー資源の枯渇による文明の崩壊は結構現実的に起こりうることなのかもしれません。

文明崩壊の要因3 食糧不足

かつて世界で起こった文明崩壊において、最も多かった問題は、食糧不足だったといいます。

 

有名なものでは、マヤ文明の崩壊があります。

高度な文字文明を作り、現在でも様々な遺跡を残したマヤ文明ですが、食糧不足が原因で滅びてしまった説が有効です。

マヤ都市が発展するごとに、森林の伐採を進めていきました。それにより川が氾濫し、農場が壊れ、マヤ文明は食糧危機におちいります。

食糧不足になると、人々よる奪い合いが始まります。

マヤ文明でたびたび起こった支配者たちの争いは、この食糧不足から始まったものであるという考え方もあります。

 

現在においては、増えすぎた人口に対する食糧をまかなうため農業の先進化を進めています。

農薬を改良し、土壌にばらまきます。

やがて土地は荒廃し、食糧不足に陥ります。

ジャレド・ダイアモンドは、食糧不足に対応するとても単純な解決方法は、地産地消を行うことであると、いいます。

地産地消を行うことにより、過剰な作物の育成競争を減らし、また輸送によるエネルギー消費を減らすこともできるといいます。

文明崩壊の要因4 地球温暖化

地球温暖化による海抜の上昇による文明崩壊も起こりうるシナリオの一つです。

地球温暖化により氷河が解けて都市が水没してしまうのです。

人間の脳は、地球温暖化のような大きすぎる危機には反応できないようにできています。

そのため、人間は目の前に温暖化による危機がせまっていても、快適な生活から抜け出せません。

文明崩壊の要因5 金融システムの崩壊

金融システムの崩壊による文明の崩壊。過去にはない、現在の文明だからこそ起こりえる、崩壊のシナリオです。

 

2008年に起こったリーマンショックにより数百万人が仕事と家を失い、数百兆ドルものお金が消えてしまいました。

目に見えない、形のない経済が、人間の実生活に多大な影響を与えることが十分に起こりえることを、証明しました。

 

文明崩壊を防ぐには

文明が崩壊するときは、ひとつだけの理由で起こるのではなく、さまざまな理由が重なって起こります。

現代の文明が築く科学の力は強大なものです。これが、破壊の方向に向かうのか、保存の方向に向かうのかによって、未来は大きく変わります。

人間は過去から学ぶことができます。

現代の文明はあまりに巨大で、人間だけではなく、全ての生物の未来の運命まで握っています。

世界が正しい方向に向かうのか、これからの私たちの生き方が問われています。

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