ユダの福音書はキリスト教徒にとって不都合な文書だから歴史から消されている?

ナショナルジオグラフィック ユダの福音書 ドキュメンタリー
©日経ナショナルジオグラフィック社

ユダの福音書 イエスと”裏切り者”の密約」のDVDは、ナショナルジオグラフィック社によるドキュメンタリー番組です。

1時間26分と、ちょっと長めの内容となっています。

キリスト教徒においては、イエスキリストを裏切り、裏切りの代名詞とされている人物ユダ。

近年、エジプトの砂の中から発見された古代の福音書に書かれていた内容は、これまでの常識をくつがえすものでした。

その中では、ユダは英雄として書かれていたのです。

その福音書の真贋鑑定と、解読のドキュメンタリーです。

これが本物だとしたら、キリスト教の概念が根底からひっくり返るレベルです。

ただの異端の書なのか、真実を示す重要な歴史的書物なのか、その真実を探す旅にナショナルジオグラフィック社が挑戦します。

ユダの福音書の発見

1978年、エジプト、ナイル川近くのある洞窟に、財宝を狙ったハンターが入りました。

彼は金銀財宝を探しましたが残念ながら発見したのは石の箱に入った、不思議な皮に包まれた文書だけでした。

彼は、この文書が、1800年前に異端として排斥されたユダの福音書の写本であることを理解できませんでした。

彼は、この本をディーラーに売り渡してしまいます。

22年後、西暦2000年のニューヨークで、ユダの福音書を探し回っていた古美術品ディーラーがエジプト人のディーラーから買い取った一冊の写本を大学に鑑定依頼したところ、ユダの福音書かもしれない、という衝撃的な回答が返ってきました。

こうして、ユダの福音書は歴史の表舞台に出てくることとなりました。

ユダの福音書の復元と鑑定

2002年スイス、書物の修復で有名な専門家は、届いたその文書の保存状態の悪さに驚きました。

ユダの福音書は、エジプトのディーラーが貸金庫内に数十年保管していたため、保存状態が悪く風化してしまった部分もありました。

コプト語を理解できる修復専門家が文字のつながりを意識しながら、復元をし、もう一人が紙とインクの状態からその復元が正しいかをひとつひとつ確認しながら手作業で進められました。

復元がある程度進んだ段階で、この文書が本物のユダの福音書なのかに注目が集まりました。

パピルスが使用されていること、コプト語で記載されていること、1800年前にエイレナイオス司教が異端として排斥したものと文言が一致したものであることから、文書が本物ではないかと考えられました。

しかし、これまで聖書に関する文書は、数えきれないくらいの偽物が出てきています。

ナショナルジオグラフィックの撮影隊は、専門家を集め、鑑定を行うこととしました。

この文書の真贋鑑定においては、なぜこの文書がエジプトに渡ったのか、そのルーツを調べることが大事だと専門家は判断しました。

専門家は同じ洞窟で発見された同時代の書物などから、ユダの福音書が本物であると判断しました。

さらに、科学的な方法で、このユダの福音書を鑑定します。

放射性炭素測定法により、ユダの福音書に使われているパピルス紙を鑑定します。

結果は、3世紀頃に作られたものであることが分かりました。作成年代的にも本物の可能性が高いことを示しました。

ユダの福音書は何がすごいのか?

世界で最も読まれている本「新約聖書」は、イエス・キリストの4人の弟子が書いた「福音書」を元に作られています。

  • マタイの福音書
  • マルコの福音書
  • ルタの福音書
  • ヨハネの福音書
イエス・キリスト自身は文書を残しておらず、イエスの弟子たちが彼から聞いた言葉をまとめたものが福音書です。

新約聖書の中では、ユダが邪悪であることは、わずか18節しか書かれていませんが、人々のイメージに強く定着しており、ユダ=悪者というのは世界中の常識となっています。

ユダの福音書の復元の途中段階で、この文書にこれまでに存在した他の福音書の常識をくつがえす内容が書かれていました。

それは、イエス自身がユダに裏切りを命じたことでした。

そもそも福音書はいっぱいあった

原始キリスト教においては、福音書は30以上あったとされています。

1800年前、エイレナイオス司教の主張により、正しい福音書のみを残すべきであるとされました。

福音書は当時の教会にとって都合の良いように取捨選択されたのです。

そして、世界にはマタイ、マルコ、ルカ、ヨハネの4つの福音書が残ることとなりました。

しかし、現在その4つの福音書の作成者は分かっていません。

つまり、ユダの福音書が偽物であるという証拠も何もないのです。

 

ユダの福音書の真偽

このDVDに登場する専門家は語ります。

「決め手は、史実や真実ではなく、何を信じるか。」

多くのキリスト教徒にとって、ユダの福音書は現在でも異端のものです。

それは、そう考えたほうが、キリスト教徒にとって都合がよいからです。

ユダの福音書を信じるということは、ユダヤ教が正しいことを証明し、場合によってはキリスト教を否定することとなってしまうからです。

 

大切なことは、考え方は一つではないということです。

たとえ圧倒的多数が答えは一つであると信じていることであっても。

ナショナルジオグラフィックに関する記事

メルセデス・ベンツの究極のスーパーカーSLS・AMGを作る工場の映像

ナショナルジオグラフィックが太古の海のモンスターをCGで再現

バーミヤーンにある崖に彫られた巨大な仏像とタリバン政権による破壊

コメント