自らの体を盾にして大統領を銃弾から守った最強の軍団シークレットサービス

ナショナルジオグラフィック シークレットサービス ドキュメンタリー
©日経ナショナルジオグラフィック社

大統領が外に出かけたときに、スーツを着てサングラスをかけて周りを囲んでいる屈強な男たち。

ピンマイクとイヤホンで常に連携を取りながら、群衆の一挙手一投足を見逃さない鋭い視線。

それが最強の警備集団シークレットサービスです。

DVD「シークレットサービス 大統領を守る男たち」は、そんな男たちを追ったナショナルジオグラフィック社のドキュメンタリー作品です。

なぜ大統領の警備は厳重なのか

これまでのアメリカの歴史上で、4人に1人の大統領が襲われ、10人に1人が殺されているという事実があります。

主な暗殺された大統領

  • アンドリュー・ジャクソン大統領(1837年アメリカ大統領初の暗殺)
  • リンカーン大統領(1865年暗殺)
  • ガーフィールド大統領(1881年暗殺)
  • マッキンリー大統領(1901年暗殺)

それまでも、非公式にシークレットサービスが大統領の護衛を行っていましたが、正式に議会で大統領の護衛として立法化されたのは、1951年のことです。

それは、前年に起きた事件を受けてのことでした。

1950年にトルーマン大統領を狙ったプエルトリコ人がブレア・ハウスを襲撃した際に、シークレットサービスが暗殺を食い止めたのです。

 

シークレットサービスの仕事

大統領は歩く標的と呼ばれています。

シークレットサービスは、その大統領を守るために作られた組織で、動く盾と表現されます。

大統領がホワイトハウスを離れる計画が出るたびに、シークレットサービスの職員が数百人の人員と数千時間の時間をかけて護衛の計画を立てます。

護衛計画の内容
  • 大統領が向かう先に事前に行き、スナイパーが隠れそうな場所を探す
  • 最近の犯罪動向を調べ、近くに大統領を狙うものがいないか予想
  • 大統領にもしものことがあったときのために輸血用の血液を確保
  • 出入口の確認
  • 爆弾の有無の確認
  • 参加者にテロリストがいないか確認

シークレットサービス最大の危機

2001年9月1日、シークレットサービスの警備史上最大の危機が訪れます。

世界貿易センターのハイジャック機衝突事件です。

同時に複数の飛行機がハイジャックされ、ホワイトハウスにも1機向かっていることが確認されました。

当時の大統領はブッシュ

シークレットサービスは、ただちに大統領をエアフォース1に乗せ、安全を確保しました。

エアフォース1は戦闘機の名前ではなく、正確には大統領専用機に大統領が乗り込んだときのコールサイン(通信用の暗号のようなもの)。

これまでの大統領暗殺では、一人または数人で拳銃により大統領を狙ったものばかりであったため、ここまで大規模なテロ行為は過去行われたことはなく、シークレットサービスは混乱しました。

結果としてホワイトハウスに飛行機が墜ちることはありませんでしたが、これ以降、シークレットサービスは、大規模なテロに備えての訓練を重ねていきます。

クリントン大統領の悲劇

1963年11月、テキサス州でのジョン・F・ケネディ暗殺、このとき、大統領はオープンカーに乗ってたところを狙われました。

狙撃手の銃弾が大統領の頭を撃ち抜きました。

シークレットサービスが発砲音を聞き、かけつけたときには車内に脳みそが飛び散っていたそうです。

これをきっかけに大統領車ビーストが生まれました。

ビーストも、エアフォース1と同じコールサインです。

空を飛ぶことと水の中を進む以外は何でもできるといいます。

大統領候補の護衛

1968年ロバート・ケネディ大統領候補は、至近距離から撃たれ、殺されました。

暗殺されたジョン・F・ケネディの弟です。

これ以来、シークレットサービスは、大統領候補の警護も行っています。

選挙中の大統領候補は、常に群衆の前に出る必要があるため、困難な警護となります。

 

シークレットサービスは大統領の全てを知っている

シークレットサービスは、かたときも離れずに大統領と一緒にいるため、繊細な政治の内容や、家族に関する話題まで、他人に知られてはいけない重要な情報を全てを知っています。

彼等にとって、秘密を守り、決して漏らさないことは、国家としてとても大事なことです。

しかし、国がそれを逆手にとって、シークレットサービスを利用したこともあります。

クリントン大統領の不倫疑惑について、シークレットサービスのエージェントが裁判の証人として呼ばれたのです。

結果としてクリントン大統領は、弾劾されてしまいました。

弾劾された大統領はアメリカ史上で2人しかいません。

シークレットサービスの持つ情報は、アメリカ全体を動かせるほどのものだったのです。

シークレットサービスの奇跡

このDVDではレーガン大統領が襲撃を受けた際の奇跡の映像が収録されています。

ヒルトンホテルでの会議を終え、大統領車へ乗り込もうとした瞬間に、複数の銃撃が聞こえます。

銃声が聞こえた瞬間、シークレットサービスの一人が、大統領の前で腕を広げ、自らの体で大統領を守り、撃たれたのです。

周りの人間たちが地面に顔をうずめ、逃げ惑う中で、シークレットサービスの人間が、自ら盾になって大統領を守ったのです。

人間の本能に逆らったこの奇跡的な映像は、世界中に広まりました。

シークレットサービスの訓練と覚悟が証明された瞬間でした。

 

シークレットサービスの年収は、300万円から800万円くらいといわれています。

富も名声もないシークレットサービスが命を懸ける理由。

「母国のため」という誇りのためなのです。

24時間寝ることもできず、4~5年任務に就けば、体はボロボロになるといわれている仕事ですが、みんな、その仕事を行ったことに誇りを持っています。

他のナショナルジオグラフィック作品もオススメ

ナショナルジオグラフィック社の「赤ちゃんの不思議」

ポルシェ911を作るドイツの工場にナショナルジオグラフィックが突入

ナミブ砂漠のミーアキャットの家族をナショナルジオグラフィックが撮影

コメント