池上彰の経済教室 第1回~第13回は戦後・冷戦・高度経済成長の講義

池上彰の経済教室 投資・金融・会社経営(DVD)
©池上彰/テレビ東京

池上彰の経済教室」は、ジャーナリスト池上彰が行った経済学の講義全43回と特別講義、課外授業を含めた合計1091分にも及ぶ内容を16枚にまとめたDVDです。

講義は2014年4月から2015年3月の1年にわたり愛知学院大学で行われたものです。

池上彰は経済に対する知識が全くない素人に対する丁寧な説明が非常にうまく、経済を全く学んだことがない人のほうがこのDVDを観ることでゼロから経済を学ぶことができます。

学生時代にこんな先生がいてくれたらもっと経済に興味を持てたのになぁと思います。

大学で行われた講義ですが、内容は非常に簡単にまとめられており、経済を初めて学ぶ子供にオススメです。

池上彰

©池上彰/テレビ東京

全ての講義内容の感想を書くととても長い記事になってしまいますので、今回は第1回から第13回までの講義の内容を書かせていただきます。

このDVDを観てほしい人

  • 経済学を勉強したことがないけど興味がある人
  • 世界で起こる時事問題を全体的に知りたい人
  • 政治、経済、宗教がどのようにつながっているのかを知りたい人
  • 池上彰が好きな人

第1・2回 経済とはそもそも何か

池上彰が経済を一言で表すとすれば、「資源の最適配分を考える学問」です。

貨幣の大切さ

かつてカンボジアで成立したポル・ポト政権が貨幣を廃止した結果、大貧困と、独裁者による大虐殺が起こった話は「お金」の大切さを強烈に教えてくれます。

ポル・ポトは1976年にカンボジア(当時は民主カンプチアという国名)の首相となった人物で自給自足の生活を理想とする極端な共産主義者でした。

経済の重要ワード「機会費用」

人間は、何か行動をするたびに別の何かをする時間を失っていて、常に機会費用を支払っているという大事な観念です。

失った時間で別の何かを生産できたため、「機会」を失った「費用」を払ったことになるのです。

その他、行動経済学とはどのようなものか、アベノミクスとは何か、等幅広い知識について説明しています。

行動経済学は、心理学と経済学を組み合わせたもので、近年注目されている新しい学問です。

初回は経済に興味を持ってもらうために広く浅く説明してくれています。

第3・4回 廃墟から立ち上がった日本

第3・第4回の講義は、第二次世界大戦後の日本にスポットを当てた講義です。

中学、高校の歴史の授業ではほとんど学ばないけれど、現代日本の成り立ちにとっては非常に大事な時代です。

戦後、焼け野原になり衣食住すらままならない状況でどうやって人々の生活を立て直すのか。

山口判事という裁判官が闇市などの違法な取引に反対し、正当な売買のみによって生活しようとした結果、食べ物が手に入らず餓死してしまった話は衝撃的でした。

山口判事は、闇米を食べた人を食糧管理法違反で裁いたときに、自分が違法な食べ物を食べるのはおかしいと考え、配給による食糧しか食べなくなりました。
闇米を食べなくなってわずか1年、33歳の若さで亡くなってしまいました。

需要に対して供給が追い付かず強烈なインフレが起こり、物を買うために全国民が預金を降ろしたため、銀行が危機に陥ります。

戦後の特殊な状態では、どんなに高くても食べ物を買わないと死んでしまうので、どんどん物価があがっていきます。

預金封鎖を行うことでこの急場を切り抜けることにします。

その他、GHQの5大改革など日本の経済において重要な政策について分かりやすく説明してくれています。

GHQの5大改革
  1. 秘密警察の廃止
  2. 労働組合の結成奨励
  3. 婦人解放
  4. 学校教育の自由化
  5. 経済の民主化

第5・6回 東西冷戦の中の日本

第二次世界大戦後、西側諸国がこれまで植民地にしていた国の独立を掲げました。

一方で、ソ連は、戦争になっても自国に被害が及ばないよう東ヨーロッパ諸国を支配しようとします。

それにより、東西対立という構図が生まれます。

ソ連は、第二次世界大戦中にナチスドイツの攻撃により、最も多くの戦死者を出した国です。
だから、自国を守るための盾になる国が欲しかったのです。

ドイツはベルリンの壁により東西に分断され、朝鮮半島は38度線により南北に分断されることになります。

ドイツは1989年にベルリンの壁が崩壊し、東西が統一されていますが、朝鮮半島は現在も北朝鮮と韓国に別れたままです。

アメリカとソ連の核開発競争、キューバ危機など、経済というよりは世界の近代史に関する話がメインの回でした。

資本主義と社会主義という大きな経済対立が冷戦に発展する経済と軍事が大きく関わった時代です。

第7~10回 日本の高度経済成長 公害問題を乗りこえれば…

日本は社会主義国?

かつてソ連のゴルバチョフが言った言葉「最も成功した社会主義国は日本である」という言葉があります。

日本は資本主義諸国の一員ではありますが、社会主義のトップにそう言わせるほど特異な経済成長をした国なのです。

ゴルバチョフの言葉の真意は語られていませんが、日本の働き方として終身雇用、年功序列賃金など、社会主義に近い働き方が発展していたことはこの言葉を裏付ける根拠になります。

日本の高度経済成長を支えたもの

神武景気、岩戸景気、いざなぎ景気、所得倍増計画、この時期の日本は、とんでもない成長していました。

この経済成長を支えていたものの一つに、「財政投融資」があります。

  1. 郵便局に預金する
  2. 郵便局が政府にお金を渡す
  3. 政府が政府系銀行にお金を渡す
  4. 政府系銀行が民間に貸し出す

という政府を経由したお金の流れが、借りる側に安心感を与え、民間投資が一気に活発になりました。

池上彰がNHKに入社したときの初任給は6万8千円でしたが、翌年には8万円になったそうです。
1年で2割近くも給料が上昇したのです。

その他講義で話されたテーマ

  • 春闘の話
  • 三種の神器と呼ばれた家電
  • 高度経済成長の代名詞である国産車の開発
  • 東京オリンピックの話
  • 高度成長による弊害、公害
池上彰は、経済発展の良い面だけではなく、その裏側にある負の財産「公害」についても話し、学生に広い視点で学ぶことの大切さを教えてくれています。

第11~13回 バブルが生まれ はじけた

バブルの定義は「実体価格を超えた資産価格の上昇に伴う過熱景気」ですが、これを池上彰がやさしく解説してくれます。

日本のバブルの時代、東京23区の土地を全て買うとアメリカ全土が買えるほど、地価は高騰していました。

1986年から1991年のあらゆる資産の価値が上がり続けた日本を「バブル時代」といいます。

シーマ効果といわれる日産の高級車が売れまくる現象が発生したそうです。

これは、家の価格が高騰しすぎてサラリーマンがマイホームを買えなくなった結果、車に需要が集まったためだそうです。

とても面白く悲しい現象ですね。

バブルと、その崩壊の原因
  1. 買った土地が持っているだけで値上がりするので、さらに土地を担保に新たな土地を買うことを繰り返してどんどん資産を増やして行く
  2. これをたくさんの人がどんどん繰り返して資産価値がぶくぶくと膨れ上がっていく
  3. ある日土地の値段がほんの少し下がる
  4. 担保割れしてしまい土地を1つ売らなければならなくなる
  5. 市場に売られた土地が増えるとさらに土地の価格が下がる
  6. とさらに担保が足りなくなり土地を売る
  7. 土地の価格が暴落する

そうすればバブルは弾け、一気に経済がしぼんでいきます。

バブルというのは、古くからイギリスの南海泡沫事件、オランダのチューリップバブルなど繰り返されてきたのですが、人類は歴史から学べず、日本でも結局お金にとらわれた人たちがバブルを起こしてしまいました。

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