「引っ越し大名三千里」は、江戸時代の藩の引っ越しをテーマにした独特な漫画です。
天和2年(1682年)徳川幕府79年目、播磨国(はりまのくに)姫路藩は幕府により5度目の国替えを命じられました。
1682年は、徳川5代将軍・綱吉の時代です。
生類憐みの令で有名な将軍です。
海を渡り遠く豊後日田藩(大分県)へ2か月以内で引っ越す必要があり、さらに十五万石から七万石への減封まで言い渡されてしまいます。
幕府は、各藩の反乱が起きないように参勤交代や国替えにより藩の財政を苦しめ、権力をコントロールしていました。
藩士と藩士の家族・使用人などが総出で引っ越します。
百姓たちが引っ越すわけではなく、領主たちがごっそり入れ替わるのです。
引っ越しの費用はもちろん藩が出すしかなく、この引っ越しの総責任者である引っ越し奉行を誰が務めるかで揉めます。
藩の剣術指南役を務めている鷹村源右衛門(たかむらげんえもん)が推薦したのが、主人公の片桐春之介(かたぎりはるのすけ)です。

©永田狐子/小学館
鷹村は何とかして友人である春之介を出世させてやりたいという思いで引っ越し奉行の話を持ってきますが、とんでもない大役でした。

©永田狐子
引っ越し奉行は失敗すれば切腹という過酷な条件があるため誰もやりたがらなかったのです。
剣術もソロバンも苦手な春之介は、みんなからクズ呼ばわりされ、書庫番として書庫に引きこもって本を読む生活を長い間続けていました。
そのため周りのみんなからは「カタツムリ」と呼ばれています。
しかし、春之介は書物を読み漁っていたことから、非常に知識が豊富で、頭の回転も早く、次々と起こる難問を切り抜けていきます。
藩の財政は残り7千両しかありませんが、引っ越しには2万両がかかります。
この物語は江戸初期から中期頃の話なので、1両=10万円くらいと考えられます。
2万両は現在の価値で20億円くらいということになります。
これを解決するために春之介は、あの手この手でお金を集めていきます。
江戸時代の庶民の生活や藩の経営事情などが事細かく表現されていて、歴史書を読んでいるような知識の深さに驚く漫画です。
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