太田雄貴が協会会長になって日本のフェンシングを変えた「CHANGE」

CHANGE 僕たちは変われる スポーツ(単行本)
©太田雄貴/文藝春秋

CHANGE 僕たちは変われる」は、今フェンシング界に革命を起こしつつある太田雄貴が2019年10月に文藝春秋から出版した自伝です。

この本を読んで思ったことは、もしかしたら太田雄貴は、若き天才経営者で、今後日本のスポーツビジネスは大きく発展してくのではないかということです。

太田雄貴とは?

太田雄貴という名前だけを聞いて誰のことかパッと思い出す人は多くないかもしれません。

オリンピックでフェンシングで銀メダルを取った、といえば分かる人は多いのではないでしょうか。

また東京オリンピック招致アンバサダーとして活動し、2020年の開催地が「TOKYO」と決まった瞬間号泣しながらガッツポーズしている姿を思い出す人は多いかもしれません。

太田雄貴の簡単な経歴
  • 2008年北京オリンピックの男子フルーレ個人で銀メダル
  • 2012年ロンドンオリンピックの男子フルーレ団体で銀メダル
  • 2013年12月、国際フェンシング連盟(FIE)のアスリート委員長に就任
  • 2017年6月、日本フェンシング協会の会長就任
  • 2018年国際フェンシング連盟副会長に就任

日本フェンシング協会会長としての活動

日本フェンシング協会の会長に31歳という若さで就任した太田雄貴ですが、改革を行う前に現在のフェンシングの問題点をまとめることから始めました。

  • フェンシングはスピードが速すぎてどっちが勝ったか分からない
  • 観るスポーツではなくやるスポーツになっている
フェンシングとの比較として、フィギュアスケートは競技人口は少ないが観戦者が多く、観るスポーツとしての地位を確立しています。
  • フェンシングはオリンピックでのメダル獲得で認知されたが、人気は出なかった
2012年ロンドンオリンピックで銀メダルを取った翌年1月の日本選手権男子フルーレ決勝の観客は150人という衝撃的な数字でした。
写真だけを見ると無観客試合に見えてしまうほどです。
  • フルフェイスのマスクを着用するため選手の表情が見えないという不利を抱えている

太田雄貴がフェンシング界の改革を始める

太田雄貴は、会長就任後、最初の大きな大会である2017年10月の高円宮杯ワールドカップでさっそく大会の改革を始めます。

  • 巨大なLEDディスプレイを使った演出
  • ダンサーFISHBOYによるダンス
FISHBOYはオリエンタルラジオの中田敦彦の弟で、「PERFECT HUMAN」の曲の後ろで踊っている人です。
  • ポスターのデザインをアートディレクターに依頼しスタイリッシュにする
  • 選手による観客への声掛け

地道な集客活動により、前年比5倍の1500人という観客を呼ぶことに成功しました。

次の2018年12月の全日本選手権大会ではさらに革命を推進します。

  • プレミア感を出すために700席しかない東京グローブ座で開催
  • チケット代を一気に引き上げ、一番高いところで6000円とする
  • AbemaTVでの生放送

チケットはわずか40分で完売し、生配信は30万人が視聴するという大成功をおさめました。

オリンピックの真実

オリンピックにはその重要度により種目ごとにランク分けされており、そのランクに応じてIOCからの分配金が増える仕組みになっています。

陸上、水泳、体操がAランク

サッカー、テニスがBランク

フェンシングはDランク

このフェンシングのランクの低さのために、分配金が少なくオリンピックでの改革はまだまだ難しいのが現状です。

太田雄貴の新たな挑戦

現在、日本フェンシング協会は、さらなる改革にむけて様々な改革を行っています。

FVの導入
剣の速度が速すぎて勝敗が分かりにくいスポーツ、フェンシングを技術力の発展により解決する取り組みを行っています。

フェンシングの可視化をめざしてFV(フェンシングビジュアライズド)に挑戦しているのです。

FVとは、ARやモーションキャプチャーを用いて剣の軌道に色を付ける技術です。

フェンシングを体験できる

フェンシングは知名度のわりに競技者がかなり少ないスポーツです。

それは、そもそもフェンシングをやる場所がないことが大きな要因です。

そこで、日本フェンシング協会は、アソビュー!(asoview)のサイトからフェンシング体験を簡単に申し込めるようにし、フェンシングのすそ野を広げようと頑張っています。

日本のフェンシングのレベル

日本のフェンシングのレベルは年々上がっており、現在では世界トップ5に入るレベルです。

日本のエース見延和靖は、2019年7月に世界ランキング1位という快挙を達成しました。

フェンシング選手の未来を守る取組

そして、アスリートフューチャーファーストを掲げ、ベネッセ協力のもと選手たちに英語の試験を受けさせています。

選手として審判への抗議などの面で有利になるだけではなく、英語ができれば、引退後に海外でフェンシング関係の仕事に就ける可能性が大きく上がるからです。

 

とにかく、フェンシング界の未来を見据えた改革が今まさに進んでいることが分かります。

これがうまくいけば、ビジネスとしてアメリカに大きな差を付けられている日本スポーツ界全体を改革するようなインパクトを与えられるかもしれません。

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