土肥美智子は、サッカー日本代表に帯同する内科担当ドクターです。
放射線診断学の専門医資格を持っています。
2019年9月20日に出版された本書「サッカー日本代表帯同ドクター」は、スポーツドクターという特殊な仕事について知ることができます。
サッカー海外遠征に同行するスポーツドクターの仕事
- 海外遠征の際、時差調整を行うために、睡眠時間や食事のタイミングを出発前から選手に細かく指導する
- 砂漠地帯ではアレルギー症状が出ることがあるので抗アレルギー剤を処方する
- 大会前に選手が怪我をした場合は、すぐにCTやMRIによる撮影を行い、瞬時にプレイ可能か判断する
スポーツドクターになるには
まずは通常の医師と同じように医師免許の国家資格に合格する必要があります。
その後、研修医としての2年間を終えたのち、3種類あるスポーツドクターの講習会や審査を経てスポーツドクターとなります。
- 日本医師会認定のスポーツドクター
- 公益財団法人日本スポーツ協会のスポーツドクター
- 日本整形外科学会のスポーツドクター
スタッフは全員スポーツ救命ライセンスを持っています。
メディカルチームだけで台車4台分の医療器具を持っていきます。
選手の怪我によりコーチが変わる
- トレーニングに参加できるレベル:フィジカルコーチ
- トレーニングに参加できないレベル:アスレティックトレーナー
- ピッチに出られるほど回復した場合:コンディショニングコーチ
スポーツドクターと通常の医療の大きな違い
通常の医療であれば弱い薬からだんだん強くしていきますが、スポーツ医療では選手を早く回復させる必要があるので、いきなり強い薬から処方していくともあります。
また、通常の医療であれば手術する場合でも、試合への出場をできるだけ可能にするため、手術を回避し、保存療法を優先した治療もしばしば行われます。
クライオセラピー
クライオセラピーとは、近年スポーツ界に新たに導入された治療で、マイナス196℃の窒素ガスカプセルの中に2~3分入り、疲労回復に効果があるといわれています。
体を急激に冷やすことにより血管を収縮させ、体が体温を上げるために血管を広げ血流が増えることにより酸素が体内に多く送り込まれることにより疲労を回復します。
ドーピング検査の秘密
サッカーでは、試合のハーフタイム中か後半30分に両チームのスタッフが大会ドクターに別室に呼ばれ、そこで見えない袋に入った番号を引きます。
そこで引き当てた背番号の選手がドーピング検査の対象者になります。
もちろん、ドーピング疑惑のある選手やパフォーマンスが怪しい選手は個別に指名されてドーピングが行われます。
さらに、競技外での抜き打ちドーピング検査というものもあります。
検査担当者が選手の練習場や宿泊施設に突然現れて行われます。
スポーツドクターの種類
一言にスポーツドクターといっても3つの種類があります。
- 競技会を運営する側につくドクター
- クラブチームや代表チームに帯同するドクター
- 病院やクリニックで選手を受け入れるドクター
性分化疾患という問題
南アフリカの女子陸上代表選手のキャスター・セメンヤが、リオデジャネイロ五輪で800m走で圧倒的な記録を残しました。
彼女の体格は男性のようで顔つきも男性に近く、声も低いことからニュースなどで性別が違うのではないかと疑われました。
検査を行った結果、テストステロンという男性に多く分泌されるホルモンが平均的な女性の値を大きく上回っていました。
このテストステロンは、骨格や筋肉を作る大きな要素なので、多く分泌されれば運動能力が高くなります。
国際陸上競技連盟は、テストステロン値が一定以上の女性の出場資格の制限を発表しました。
これは、女子の400mから1600mのレースで2019年11月1日から適用されていますが、この規定は差別的であると現在でも批判の多い対応となっています。
こういった問題とどう向きあっていくのかを考えるものスポーツドクターの大切な仕事です。
スポーツドクターに一番大事なこと
選手の中には、怪我をしてスポーツドクターに診てもらうと、メディカルチームから監督に話がいき、代表に呼ばれなくなってしまうと考えてしまい、怪我を隠そうとしてしまうことがあります。
メディカルチームと選手の信頼関係はとても大事なことなのです。
スポーツに関するオススメ作品
パラアスリートのスポーツ青春漫画「新しい足で駆け抜けろ」が面白い
コメント