池上彰の経済教室 第23~31回講義は貨幣・リーマンショック・EUの話

池上彰の経済教室 投資・金融・会社経営(DVD)
©池上彰/テレビ東京

池上彰の経済教室」は、ジャーナリスト池上彰が行った経済学の講義全43回と特別講義、課外授業を含めた合計1091分にも及ぶ内容を16枚にまとめたDVDです。

今回は、第23回から第31回までの講義を紹介させていただきます。

池上彰の経済教室 第1回~第13回は戦後・冷戦・高度経済成長の講義

池上彰の経済教室 第14~22回は社会主義・中国・石油の講義

池上彰の経済教室 第32~43回は金融政策・宗教・成功企業の講義

第23~25回 お金が商品になった

第23回から第25回までの講義は、「お金」そのものの価値の話です。

円高・円安の概念

1ドル100円の為替レートが1ドル120円になると円高か?円安か?

始めて日本に変動為替相場が適用された1976年には、この質問に答えられる人はほとんどいませんでした。

むしろ100円が120円に増えているのだから1ドル=120円のほうが円高だろうと感覚的に考える人が多かったくらいです。

1ドルの通貨を買うのに100円でいいのか、120円出す必要があるのか、を考えればどちらが円の価値が「高い」かが分かります。

ドルが世界最強の通貨になる

次に、ドルが世界の基軸通貨となるまでのお話です。

第二次世界大戦が終わるまではイギリスのポンドが世界の中心でした。

戦争により圧倒的な経済力を有することとなったアメリカのドルを基軸通貨とする「ブレトンウッズ体制」が決定されました。

その後、ニクソンショックによる金との交換停止、変動相場制への移行があります。

変動相場制になったことにより為替市場が誕生します。

為替は1ドル=100円、というように1ドルに対する価値を示すのは、ドルが基軸通貨だからです。

お金が商品になる

通貨が変動相場制になるとオプション取引などの金融商品の取引が始まることになります。

変動相場になると、海外へ販売した商品が運ばれていく間にお金の価値が変わってしまい、取引が安定しません。
そのために将来のお金の価値を決めておいて取引するのがオプション取引です。

オプション取引をするために一定の手数料を支払います。

お金の取引が商品になった瞬間です。

今でこそ金融商品としてFXが当たり前のように一般市民にも広がっていますが、物事の歴史をたどればおもしろい発見があります。

第26~28回 リーマン・ショックが起きた理由

2008年、リーマン・ブラザーズというアメリカの大手投資銀行が2008年に経営破綻しました。

アメリカでは日本と違い制度上、通常の銀行と投資銀行という二つに分かれています。

通常であれば政府が救済する場面でしたが、アメリカの共和党政権は小さな政府を掲げているため、市場の機能に任せリーマン・ブラザーズが破綻した後も市場が自動で回復するのを見守った結果、世界中に経済不安が広がり株式市場が大暴落しました。

池上彰は「リーマン・ブラザーズが破綻したことより、その後の処理をきちんとしなかったことがリーマン・ショックの原因」と言います。

リーマン・ブラザーズがどのような会社で、何をして破綻したのか、サブプライムローンとは何か、等リーマン・ショックのキーワードとなる事柄を丁寧に説明してくれています。

リーマン・ブラザーズが破綻するほどサブプライムローンが増えた理由

一番のポイントは、日本では住宅ローンが払えなくなったら、担保にしていた自宅を持っていかれ、借金だけが残るけれど、アメリカでは担保を持っていかれたら借金はチャラになるという点です。

これによりたくさんの人が気軽に住宅ローンを組み住宅バブルが発生しました。

 

第29~31回 EUとユーロ

ギリシャの破綻

2009年、ギリシャが国家単位で粉飾決算を行っていたことが発覚しました。

粉飾決算は、赤字を隠し財政をよく見せる手法です。
企業が行えば犯罪ですが、まさか国家単位で行われているとは思われていませんでした。

ギリシャ政権が交代したことにより、財政を確認したところ次々と問題点が見つかったのです。

年金などの社会保障が充実している割に税金で国家財政を賄えないギリシャは、破綻を避けるため、国家公務員の削減、年金の削減を発表します。

ギリシャは現役時代と同じくらい年金がもらえ、国民の4人に1人くらいが公務員という信じられない状況でした。

ギリシャでは緊縮政策に反対した国民たちの暴動が起き、結局経済は破綻してしまいます。

それは、ポルトガル、イタリア、アイルランド、スペインなど他の経済的に弱体化していたEUのその他の国に広がってしまいます。

EUの歴史

そもそも、ヨーロッパ諸国ではお互いに高い関税をかけて自国の経済を守っていましたが、その非効率を解消しようと6か国間の関税を撤廃したのがEECという組織です。

経済でうまくいったEECを関税だけではなく法手続きなども共同化しようとするECに広げました。

さらにそれを一つの国家にしてしまえば戦争も怒らないと考えて作られた共同体がEUです。

EUのトラブル

しかし、国家の統一という壮大なプロジェクトは、そう簡単にはうまくいきません。

大きなトラブル、「移民問題」が発生します。

イタリアはアフリカからの移民を大量に受け入れますが、その移民たちは北欧の充実した社会保障を目指して北上します。

EU加盟国では通関がありませんので、移民たちは素通りして北へ向かうことができるのです。

その結果、北欧に移民たちが大量に集まり、北欧国家の財政が苦しくなっていく問題が発生してしまいました。

結局、移民の通関を国家間に作って管理するようになってしまいます。

 

そして共通通貨ユーロにおいても問題が発生します。

通貨を統一するということは、経済政策を統一することです。

国家は、通貨の発行量を調整することで、経済をコントロールすることができます。

しかしEU内にも景気のいい国悪い国がそれぞれ存在します。

金融緩和するのか引き締めをするのかを足並みをそろえて行うことができないのです。

それでもEUは素晴らしい?

社会的、経済的な問題はたくさん残っていますが、現在、EU加盟国内で戦争が起こったことはなく、大事な目的の1つは果たされています。

しかし、これからどうやってEUが成長していくのか、まだまだ色んな課題が残っています。

これらの問題が全て解決されたときには、本当に理想の一つの世界が作られることになるのかもしれません。

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