池上彰の経済教室 第32~43回は金融政策・宗教・成功企業の講義

池上彰の経済教室 投資・金融・会社経営(DVD)
©池上彰/テレビ東京

池上彰の経済教室」は、ジャーナリスト池上彰が行った経済学の講義全43回と特別講義、課外授業を含めた合計1091分にも及ぶ内容を16枚にまとめたDVDです。

今回は、第32回から第43回までの講義を紹介させていただきます。

池上彰の経済教室 第1回~第13回は戦後・冷戦・高度経済成長の講義

池上彰の経済教室 第14~22回は社会主義・中国・石油の講義

池上彰の経済教室 第23~31回講義は貨幣・リーマンショック・EUの話

第32~35回 金融政策が分かる!アメリカの金融政策が分かる!

第32回から第35回までの講義は金融政策とは何か、についてです。

政治と経済がどうつながりっているのかが分かりやすく説明してくれています。

金融政策
  • 景気過熱時=金融引き締め
  • 不景気時=金融緩和

金融緩和とは、銀行がお金を貸し出すときの利率を下げてお金を借りたい人が借りやすくすることです。

これにより消費を増やし景気を回復させる方法が長らく金融政策として取られていましたが、日本は金利をほぼ0%にしても景気が回復しませんでした。

金利を0にしても景気が回復しなかったため、世界でも珍しいマイナス金利政策がとられています。

そこで実際に出回っているお金の量を増やすことでお金を使わせる政策を考えます。これが量的緩和と呼ばれるものです。

日本銀行が金融機関から国債を買うことで、金融機関が貸し出せるお金の量が増え、市中に出回る通貨の量が増えます。

これとアベノミクスにより日本の景気は少しずつ回復していますが、お金を増やし続けることが国にとって悪い面もあります。

2019年現在で、日本銀行が所有する国債の量は全体の50%近くにもなっています。

金融政策には、必ず出口戦略が必要なのですが、現在の日本ではまだ不透明なままです。

第36~39回 宗教と経済

ユダヤ教と経済

経済を語る上で宗教は切っても切り離せません。

特にユダヤ人が発展させた金融業は現在においても世界で重要な役割を担っております。

そもそもユダヤ教がなぜ迫害を受けることになったのかは、新約聖書までさかのぼることになります。

説明は省略しますが、ユダヤ人は迫害により金融業という仕事を選ばざるを得なかったのです。

かつて、金融業は職業として格の低いものとして考えられていました。

しかし、金融業でお金持ちになるユダヤ人が現れて、ますます迫害を受けます。

それが最後にはドイツのヒットラーによる悲惨な事件につながることになるのです。

キリスト教と経済

次に、キリスト教と経済についての説明です。

マックスウェーバーという有名な経済学者は、経済的に成功しているのは、キリスト教徒の中でもプロテスタントのカルバン派であることに気づきます。

マックスウェーバーは、1904年に「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」を発表し、世界に大きな影響を与えました。

カルバン派は、「人は、生まれつき天国に行くか地獄に行くかが決まっている」という考え方の宗派です。

カルバン派の間では、「勤勉に働いて商売が成功するかどうか」で「自分が天国へ行く運命なのか、地獄に行く運命なのか」が分かるとされていました。

そこで、カルバン派には、カトリックよりも勤勉な人が増え、経済的に成功する人たちが増えたと言います。

しかし、宗教的にはプロテスタントよりカトリックのほうが優勢になります。

カトリックから迫害を受けて海を渡りプロテスタントが建国したのが世界一の経済大国アメリカです。

イスラム教と経済

イスラム教では、コーランの教えにより利息を取ることが禁止されています。

そのため、銀行業は、預けられたお金で企業を買収し、その利益を預金者に分配するなどのイスラム金融が発達しています。

この方法は、間接的でまわりくどいですが、実体のある経済活動のため、バブルを引き起こさないというメリットがあります。

通常の金融では、銀行がお金を貸す→借りた人が銀行へ預ける→預けられた銀行がお金を貸す という方法で実体のないお金が増えていきます。

様々な宗教を知ることで、経済についても色々なことを知ることが出来るのです。また、それが思いもよらないビジネスチャンスにつながっているのかもしれません。

第40~43回 成功企業の戦略を考える

池上彰の最後の講義として、アメリカの大企業がいかにして成功したのか、また大成功したそれらの企業であっても倒産の危機があったことを学生たちに伝えます。

その話から若者たちに未来を洞察する力を養ってほしいと池上彰は言います。

スターバックスの成功と失敗

スターバックスは元々はアメリカ・シアトルでコーヒーを焙煎してコーヒー店に卸す小さなお店でした。

その小さなお店に就職したハワード・シュルツという青年が、イタリアに行った際に立ち飲みでコーヒーを飲む文化に感激してアメリカで広げたいと考えました。

薄いコーヒーを「アメリカン」と言うように当時は安い豆で薄いコーヒーがアメリカの常識でした。

最初は、高くて濃いコーヒーなんてアメリカで受け入れられるはずはないだろうと思われていたが、徐々に受け入れられ、アメリカ国民の文化を変えることに成功します。

 

しかし、スターバックスに危機が訪れます。

2008年にマクドナルドがプレミアムコーヒーを発売したことで、スターバックスは勢いを失ってしまいます。

マクドナルドの安くて本格的なコーヒーは、スターバックスのシェアを一気に奪いました。

スターバックスは、シェアを取り戻すため、人気が落ちたのかを調べた結果、効率化を重視して各店舗の機械が自動化されてしまっていたことにより、豆の良い香りが店内に広がっていないことに気づきました。

そこで取った戦略が、機械を半自動に戻して人間の手作業を入れるということでした。

これによりスターバックス店内の良い香りがよみがえり、スターバックスの業績はV字回復しました。

マイクロソフト社の成功と失敗

次に、マイクロソフト社の紹介です。

ご存知ウインドウズというOSをIBMが作るパソコンに全て導入したことにより爆発的に世界中に広がりました。

IBMは、たかが個人用PCのOSなんてそこまで利益を生まないだろうと考えていました。

ビルゲイツは、OSの使用料をPC1台ごとにIBMから受け取る契約を取り付けることに成功しました。

これがとんでもない利益率を生み出すこととなりました。

しかし、そんなマイクロソフトも現在ピンチを迎えています。

PCの時代がソフトからクラウドに移行していく流れに乗り遅れてしまったのです。

かつてハードにこだわりすぎてソフトの流行を読めなかったIBMの失敗と同じことを、今度はマイクロソフトが繰り返しているのです。

アップルと日本の家電メーカーの違い

次にアップルのお話です。

アップルがipadを発売したとき、日本の技術者たちは急いで分解してどんな最新のテクノロジーが詰め込まれているのかを確認しようとしました。

しかし、ipadの中には新しい技術が全く使われていませんでした。

新しいことを生み出すことにこだわりすぎた日本の家電メーカーと、現在ある技術を組み合わせて新しいものを作ったアップル、どちらが勝利したのかは一目瞭然です。

Amazonのすごさ

最後が、Amazonを作ったジェフ・ベゾスのお話です。

1990年代始め、まだインターネットが社会の何に役に立つのかが誰にも見えていなかった時代に、ジェフ・ベゾスは、インターネット上で物を販売する会社を立ち上げます。

未来を予測する能力が桁違いです。

また、なかなか売れないけれど需要はある商品を在庫として抱えておく「ロングテール」や、一度クレジットで買い物をすると次はワンクリックで買えるシステムによりアマゾンは爆発的に広がっていきました。

ワンクリックは、Amazonが特許を持っているので他のインターネット販売者はマネをすることができません。

特別講義 なぜ紛争は起こるのか?戦後日本の発展と課題

「戦争」と「経済」についての池上彰の考察を伝える回です。

まずは、イスラエル・パレスチナ問題の解説です。

そもそも第一次世界大戦時のイギリスの二枚舌外交がトラブルの元凶となっています。

イギリスは、オスマン帝国領を大戦で支配することができたら、アラブ諸国に対しては、「アラブの国を作っていい」と言い、ユダヤ人に対しては「ユダヤの国を作っていい」と言い、フランスには「領土を2分して統治しよう」と言いました。

紆余曲折があって、第二次世界大戦後、領土問題が解決できなくなったイギリスは国連に解決を丸投げします。

国連は仕方なくイスラエル側・アラブ諸国側と領土を分けることにしました。

しかし聖地エルサレムはユダヤ教・キリスト教・イスラム教の聖地のため、どこかの国に支配させるわけにはいかず、国連の管轄としました。

これが、聖地エルサレムを巡る終わりのない紛争に発展します。

その後、オスロ合意によりパレスチナ人が多く住んでいた地位がパレスチナ自治区として認められるようになりましたが、パレスチナ人の過激派集団がイスラエルへの攻撃を止めず、イスラエル対パレスチナという構図が完成してしまいました。

 

次に、戦後日本の経済発展についての解説です。

これは、第3回~第10回くらいまでの講義のまとめのような、日本の経済発展を解説したものです。

課外授業 経済の現場を見に行く!経済学を学ぶということ

この回は、実地授業として日本経済の中心地である2か所、日本銀行と東京証券取引所を見に行きます。

最後は、講義の総まとめとして、「経済学を学ぶ」とはどういうことか、ということを池上彰が語ります。

これまでの講義での重要な経済用語のポイントの説明です。

 

 

とにかく、大学生の1年間の講義の内容を丸ごと映像化したものなので、とても長いですが、分かりやすい言葉で丁寧に説明してくれるので、自然と頭に入ってきます。

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