京都迎賓館を造り、日本の数寄屋建築の名工といわれる齋藤光義に2011年に密着し、その仕事を1か月追いかけたのが「プロフェッショナル 仕事の流儀 数寄屋大工 齋藤光義の仕事 ~突き詰めた先に、美は生まれる~」です。

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「プロフェッショナル仕事の流儀」に関する記事
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「プロフェッショナル仕事の流儀」のDVDに関する記事のまとめ
数寄屋建築大工、斎藤光義とは?
齋藤光義が勤めるのは、株式会社安井杢工務店(やすいもくこうむてん)です。
江戸時代から300年以上続く名門の工務店です。
齋藤光義は安井杢工務店の棟梁です。31人の職人を束ねています。
番組収録中には、重要文化財である薮内燕庵の修復を任されているところでした。
自ら手を動かすことはなく、作業の進捗を見極めて指示を出します。
数寄屋造りとは?
数寄屋造りは千利休の茶の湯の美とともに発展した、シンプルな美を追求し、窓や光の差し込みなどの細部にこだわった建築です。

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ボルトを使わずに、のみを使って木材を複雑に加工し組み合わせる匠の技術が必要な建築です。
名大工は材木の目利きがすごい
数寄屋造りにおいて、材木選びは大事な仕事です。
つるっとして真っ直ぐなだけの材木ではなく、あえてへこみのある材木のほうが、完成した時にきれいな陰になると言います。
齋藤光義は自ら材木店へ足を運び100本以上の中から最高の10本を選び出します。
50年後、100年後に木材がどうなっているのかを予想しながら選びます。
齋藤光義の経験が光る
齋藤光義のもとに、撮影中の5月に東京の都心に茶室を作る仕事が入ってきました。
建設中に材木の一部が表面が割れてしまい、足りなくなるトラブルが発生しました。
仕入先の岩手の材木屋が東日本大震災で被災したため追加の木材が手に入らなくなりました。
表面が割れてしまった材木を削って利用することになりました。
しかし、削りすぎて節の黒い部分が出てきてしまうと使い物になりません。
しばらく削ると節が出てきてしまいました。
しかし、もう少し削らなければ表面の割れが消えません。
ここで削るのをやめるか、さらに深く削るかの判断が難しい状況になってしまいました。
齋藤光義は長年の経験から、もう少し削れば節が消えると判断し、削り作業を続行します。
見事に節が消え、割れもなくなりました。
齋藤光義の経歴
齋藤光義は、昭和26年、京都に生まれました。
中学時代は野球部のエースでした。
高校に入ったとき、先天性の糖尿病であることが発覚しました。
野球を続けられなくなり、高校も中退しました。
22歳で母のすすめにより仕方なく工務店に入って働きます。
しかし、数寄屋建築の奥深さにどんどんはまっていきました。
35歳の若さで職長に抜てきされました。
その翌年、100坪を超える数寄屋造りの新築の仕事を任されることになりました。
設計は、日本の数寄屋造りを代表する設計士、中村昌生でした。

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齋藤光義は、設計図に従い着実に作業を進めました。
工期どおり上棟式を進めたとき、中村昌生から、すべての柱を入れ替えようと話がありました。
もう少し丸みをおびた柱にしたいとのことでした。
設計図どおりに作ったのに、何がいけなかったのか、怒りがこみ上げました。
しかし仕事を投げ出すわけにもいかないので、周りになだめられながら半年をかけて柱を入れ替えて建物を完成させました。
完成した部屋を見ると、中村昌生の正しさは一目瞭然でした。
丸みを帯びた柱が美しい世界を表現していました。
設計図を見て組み立てるだけの仕事をしていた自分に衝撃が走りました。
その後、齋藤光義は中村昌生からの仕事をたくさん受けるようになります。
そのたび中村昌生の細かい注文が入り、必死に食らいつきました。
気付けば、木を選ぶために一日中材木店に入り込むようになっていました。
そして52歳のとき、大仕事を任されます。
京都迎賓館の建築です。
齋藤光義は自分の持てる全ての技術を注ぎ込みました。
京都迎賓館が完成したとき、齋藤光義は現代数寄屋建築の天才とまで呼ばれるほどになりました。
齋藤光義の言葉
「大工仕事は積木みたいなもの。毎日毎日、積み上げていくと、積み上げた結果が出てくる仕事。」
「作業をしてても作業をしていないかのように見せることが大事。それが数寄屋造りの良さ」
プロフェッショナルとは?その質問にはこう答えました。
「安心して任せられる人。実力があって、優しい人。大工としての想像力があって木に優しい人。それがプロだと思います。」
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