「なぜこの店で買ってしまうのか」は、行動心理学を経済に用いてデータをビジネスにしたエンヴァイロ セル社のCEOパコ・アンダーヒル(Paco Underhill)の著書です。
1999年にアメリカで発行され、全米で160万部以上を売り上げ、2001年に日本版が翻訳されました。
消費者の一見何の意味もない行動から、何を買うのかを予測する手法は、預言のようなマジックのような不思議な世界です。
地道な作業の積み重ねで消費者の行動を読む
エンヴァイロ セル社では、世界中の小売店や銀行を調査し、年間5万人~7万人のの顧客の行動を追跡しています。
顧客の行動を追跡するトラッカーの仕事は、買い物客をこっそり尾行して、その行動を逐一記録する地道なものです。
通常1人のトラッカーで、1日で50人までの買い物客を調査します。
そして、トラックシートの記述を全てデータベースに入力します。
行動経済学は、ビッグデータを利用して行われるIT技術であると考えられがちですが、こうした小さな作業の繰り返しでデータは集められているのです。
どんなことが調査されるのか
トラッカーが調査するトラックシートには以下のようなものが記載されます。
- 店舗の地図
出入口、通路、ディスプレイ、棚、ラック、台、カウンターなどが細かく記載される - 買い物客の特徴
性別、人種、推定年齢、服装 - 買い物客の店内での行動
どのコーナーに向かい、何を手に取り、どの値札を見て、どれを試着し、いつレジヘ言ったかなど
それぞれの行動にかかった時間も細かく調査される
調査で分かった不思議なデータ
- 試着室にもって入ったジーンズを実際に買う割合
男・・・65%
女・・・25%
- コンピュータを眺めている客が実際に買う割合
土曜日の午前中・・・4%
午後五時以降・・・21%
経営者なら絶対に知っておくべき重要な顧客の情報
- 実際に品物を買うのは来店者のうち何人か?
- 買い物客が商品を購入するまでに費やす時間はどのくらいか?
- お店に入店して従業員に接触する客は全体の何割くらいか?
- 客の待ち時間が平均でどのくらいあるか?
消費者の行動をどうやって経営に生かすか
- 客はお店の中に入ったばかりのときにはまだ心の準備ができていない。買い物が始まるのは店に入って数秒経ってから。入り口付近に広告を置いても見る人は少ない。→広告は店の奥に貼る
- 人の手は2本しかないので、それを超える荷物を持たされるような買い物はしない。→快適に買い物を続けられるようにお客の目に付くいたるところに買い物かごを置くことが重要
- マクドナルドなのどファーストフード店に来る客は一人で来ることが多いので、店内のいたるところの細かい文字まで読む。逆にファミリーレストランの客は複数人できておしゃべりに夢中になるため店内のPOPを読むことはほとんどない。→自分のお店の形態に合った広告が大事
- 人は歩いているときに鏡を見ると減速し、銀行を見ると足を早める。→金融機関の隣にお店を出店すると素通りされる可能性が上がる
- スーパーマーケットに来る客が買う商品の中で一番多いのは乳製品。→乳製品を店の奥に置いて買い物客を店内くまなく歩かせるように仕向ける
- 男性客は女性より売り場を歩くスピードが速い。品物を眺める時間が短い。→男性向け商品のほうがより短い説明のPOPを利用する
- 家の中で使う電化製品はほとんど女性が主導権持って買い物をするが、家の外で使う電化製品では、ほとんど男性が主導権を持つ。商品によって夫婦のどちらに売り込むべきかを考える
- 店のサービスに関する客の評価を決めるのは、待ち時間の長さです。→客の待ち時間を短縮することができないのであれば、待っている間に時間をつぶせるディスプレイなどを用意するのが効果的
行動心理学から考えてもオンラインショップは有利
オンラインショッピングの5つの利点
- すぐに買えること
- 暇つぶしに商品を物色できること
- 検索できること
- 購入する前に情報を集め、スペックや製品に関する批評を閲覧できること
- 購入も物色も目的としないが、すでに所有している製品について質問したり、苦情を述べたりするために企業と接触できること
コメント