株式投資の名著「ウォール街のランダム・ウォーカー」を簡潔に説明します

ウォール街のランダム・ウォーカー 投資・金融・会社経営
©バートン・マルキール/日本経済新聞出版社

ウォール街のランダム・ウォーカー」は、バートン・マルキールによる、世界で最も有名な投資に関する本の1冊です。

「ウォール街のランダム・ウォーカー」を超完結に4行でまとめる

  • 株価をチャートから読むのは不可能
  • 株の適正な評価額を算定することも不可能
  • 株価は規則性のないランダムウォーク
  • インデックス投資信託を買うべし

バートン・マルキールとは?

バートン・マルキールは、ブリンストン大学経済学博士号を取得し、投資銀行の株式市場分析の専門家として社会人のスタートを切りました。

その後、以下のような経歴をたどりました。

  • ブリンストン大学経済学部長
  • 大統領経済諮問委員会委員
  • エール大学ビジネス・スクール学部長
  • アメリカン証券取引所理事
  • エール大学経済学部教授
  • バンガード・グループ社外役員

アメリカの株式投資の世界で巨大な影響力を持つ人物です。

ランダム・ウォークとは何か?

バートン・マルキールは株式市場の価格変動はランダム・ウォークであるといいます。

ランダム・ウォークというのは、「物事の過去の動きからは、将来の動きや方向性を予測することは不可能である」ということを意味します。

ランダム・ウォークの語源は、何もない原っぱをふらつき歩く酔っ払いの動きです。

前日に価格が上がった株が、当日も上がるかという単純な統計をとった結果、過去の株価変動と、将来の株価変動の相関はほぼゼロであるという調査結果があります。

コインを投げて表が出るのと裏が出るのが全く同じ確率であるように、株価が上がるか下がるかは、完全に「ランダム・ウォーク」なのです。

バートン・マルキールは、学生に適当にコインを投げて作ってもらった株価チャートを、実際に存在する株に見せかけて、専門の投資家に見せると、「すぐに買いだ」「すぐに売りだ」と一喜一憂したそうです。

株式投資の本質

株式投資というのは、将来を予測する能力によって結果が決まる賭けです。

ケインズは株式投資を「美人投票」であると例えました。

美人投票で勝つには、個人の美的基準ではなく、他人が美人と思う人を選ぶことです。

本質的な企業の価値の3倍もの株価がついていても、それ以上で買ってくれる人バカな人がいるなら株式投資というゲームは永遠に続くのです。

バブルという狂気

株式市場が合理的な価格を付ける世界でないことは、世界中で発生した過去のバブルを見れば一目瞭然です。

オランダのチューリップバブル

1593年にトルコからオランダへ持ち込まれたチューリップは、比較的高価な花として取引されていましたが、やや贅沢な品という程度でした。

しかし、チューリップがモザイク病という病気にかかると、色鮮やかな縞模様を作りだすことが分かると状況が一変します。

ここから収集家の間で、美しい縞模様の花を咲かせるチューリップの球根が高値で取引されるようになりました。

1634年から1637年の間で価格が上がり続け、最後には宝石や土地と交換するほど高価になっていました。

そしてある日、一人の収集家が冷静になり、チューリップの球根が高すぎるとチューリップの球根を売りはじめます。

すると、次々と売る人か増えていき、あっという間にチューリップの球根は元の価格へと暴落してしまいました。

アメリカの新規公開株ブーム

1598年から1962年まで、アメリカでは新規公開株のブームが起こりました。

社名に「エレクトロニクス」とさえ入っていれば、どんな会社でも上場後の株価は上昇しました。

しかし、エレクトロニクスと名の付く企業には、全く事業内容が伴っていないものも多く、10年以内には、これらのほとんどの株は紙くず同然の価格になってしまいました。

バイオテクノロジーブーム

1980年代になるとまたしてもアメリカで新規公開株のブームが発生します。

今度はバイオテクノロジーと呼ばれる株たちが一斉に値上がりしました。

しかし、未来の夢物語のような経営計画を作るバイオテクノロジー企業は、製品が完成せずに赤字を垂れ流したまま消えていき、投資家たちは地獄を味わいました。

日本のバブル

1990年代には日本でバブルが発生しました。

当時は、「土地神話」と呼ばれ日本の土地の価格は永久に上がり続けると、本気で信じられていました。

土地の価格は上昇し続け、日本全体の土地の価格でアメリカ全土が5つ買えるほどまで暴騰しました。

同時に日本の株式も異常な加熱を続け、日本の株式時価総額は世界全体の45%を占めるほどでした。

アメリカのドットコムバブル

アメリカでは2000年代にも巨大なバブルが発生しました。

ドットコムバブルと呼ばれています。

インターネットの発展によりIT関連の株は軒並み上昇し、ナスダック株価指数は3倍に上昇しました。

日本でも同時期に規模は小さいですがITバブルと呼ばれる現象が起こっていました。
バブルが崩壊したときには「ライブドアショック」と呼ばれました。

テクニカル分析を行う投資家とは?

バートン・マルキールは、テクニカル分析を行う投資家を「砂上の楼閣理論」と言ってバカにします。

テクニカル分析を行う投資家は株価チャートを予想することに全てを捧げるチャーティストです。

チャーティストたちは株価の動きのうち合理的な部分は10%くらいで、残りの90%は心理的な要因であると考えます。

そのため、他のプレーヤーたちの行動を読むことに一生懸命になります。

当然チャートは過去のプレーヤーたちの心理ですが、それを読むことで未来の心理が読めると考えます。

ファンダメンタル分析を行う投資家とは?

テクニカル分析を行う投資家の正反対には、ファンダメンタル分析を行う投資家がいます。

バートン・マルキールは、ファンダメンタル分析を行う投資家のことも認めません。

ファンダメンタル分析を行う者たちは、株価の動きの90%は合理的なものであり、心理的な要因によるところは10%にすぎないと主張します。

彼等の関心は株式の適正価格はいくらかということに向けられます。

企業の成長率や他の様々な要素を予想し、それらに基づいて株式の本質価値を推定することに一生懸命になります。

ファンダメンタル投資家が株式の価値を評価するのは4つの要因です。

  1. 期待成長率
  2. 支配配当額
  3. リスクの度合い
  4. 金利水準

バートン・マルキールが、ウォール街の有名なファンダメンタル投資家たちに企業の期待成長率を計算してもらい、5年後の企業価値を算定してもらいました。

結果は、どの専門家たちも、過去の業績の延長上にある無難な企業価値を算定してきました。

そして、5年後の答え合わせでは予想が外れているほうが多かったのです。

投資信託に預けるのが正解か?

テクニカル分析により投資を行うことも、ファンダメンタル分析により投資を行うことも間違いなのであれば、投資信託に預ければよいのではないか?という話になります。

それに関してもバートン・マルキールは否定します。

平均的な投資信託のパフォーマンスは、広く分散投資されたインデックスファンドのパフォーマンスを上回ることはできませんでした。

2001年までの過去20年間を調べると、大型株ファンドの成績はS&P500指数を年平均2%下回っているという結果がでました。

バートン・マルキールが考える投資の正解

株価は完全なランダム・ウォークではなく、利益や配当の成長に沿って、長期的には上昇トレンドを描きます。

そして、バートン・マルキールの結論としては、ランダム・ウォークな株式市場と戦うのではなく、インデックスファンドを購入することで、分散投資によるリスク軽減を行いながら市場平均のリターンを得ることができます。

市場平均以上のリターンを長期で取り続けることは、株価がランダム・ウォークであるため不可能であるという考えです。

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