モンスタークレーマーに悩んでいる人は「カスハラ」を読むべき

カスハラ 経済
©NHK「クローズアップ現代+」取材班/文藝春秋

カスハラ ~モンスター化する「お客様」たち~」は、NHKのTV番組クローズアップ現代で2018年11月と2019年5月に2回に渡って放送されたカスタマーハラスメントの実態を、ベースにしながら、30分番組では取り上げきれなかった取材の成果を盛り込んだ本です。

カスタマーハラスメントは、お店に来た客が店員に対して過剰なクレーム、高圧的な態度や暴言による嫌がらせ行為を行うことです。

カスハラ増加の異常な実態

労働組合「UAゼンセン」が、8万人の流通・サービス業に携わる人を対象に行ったアンケートでは、7割もの人が、カスタマーハラスメントの被害を受けたことがあると答えました。

 

客側のモラルに頼っていたのでは、企業側がもたない時代になってきました。

業界全体でクレームに対する対応の線引きを行わないと、サービス業に就く人はどんどん減っていくばかりです。

日本で現在社会問題となっている従業員不足は、主にサービス業で起こっています。

カスハラの信じられない実例

スーパーのレジ店員へのカスハラ

  • 大手スーパーの衣料品売り場で、既にバーゲン価格で赤字になっている商品をしつこく値切り、断られると店員の悪口を言い続ける客
  • レジが混雑していて、新しいレジを開けたときにタイミングの問題で次に待っていたお客を新しいレジに誘導できなかったときにキレる客
  • 家族名義のクレジットカードは使えないことを伝えるとキレる客

介護職員へのカスハラ

介護の現場では、男性優位の考え方の老人がいて、女性スタッフが暴力を振るわれることがよくあります。

また、施設入居者の家族が介護スタッフに無理な要求をしてくるケースも目立ちます。

特に要介護者の送り迎えに関しては時間を問わずタクシー代わりに介護スタッフを利用するのが当たり前と考える者がたくさんいるのが現状です。

ほとんどの場合、最初施設に預けるときは低姿勢だった家族が、だんだん時間が経ち、「お金を払っているから預かってもらうのが当然」と考え出すと態度が豹変します。

コンビニ店員へのカスハラ

あるコンビニオーナーはレジで商品を袋に入れたときに「入れ方がなっていない」と20代の作業着の男性に言われました。

それ以来、来店ごとにレジでの対応にクレームをつけ、最終的には「この店で半年間で使った金額の半分である100万円を払え」となりました。

最終的には弁護士を通して警告文を送るまで毎日いやがらせの電話がかかってきました。

写真スタジオでのカスハラ

ある写真スタジオで働く男性は、カップルの結婚記念のアルバム作りをしました。

撮影に関しては全てカメラマンにお任せということだったので撮影をして、後日完成したアルバムを送ったところ、新郎が写りが気に入らないと激怒しました。

もう一度撮りなおしても納得してもらえず、全額の返金を行いましたが、それでも納得せず嫌がらせのような電話をかけ続けてきました。

この事案でも結局、弁護士を通して何とか解決に至りました。

クレーマーが一気に増えた時期

クレームは2007年を境に一気に増えたといいます。団塊の世代が一斉に退職した年です。

まだまだ体は元気で働けるのに、社会からはじき出された人たちが、クレーマーとなって社会に怒りをぶつけているのです。

 

クレームが増えた3つの原因

  1. サービスが過剰で飽和した状態のため顧客が求めるレベルが上がりすぎている
  2. SNSの発達で一般消費者の気持ちに共感が得られやすくなった
  3. 社会的な格差の広がりで自分がサービス業をしている人より偉いと勘違いする人が増えている

クレーマーが語るクレーマーの心理

クレーマーに実際に話を聞くと、クレーマー自身は自分のことを弱者だと思っているケースが多いといいます。

自身が店員からバカにされているんじゃないか、というコンプレックスが働いて、劣等感を晴らすために正義を振りかざすといいます。

クレームを言った後には、「なぜあそこまで言ってしまったのか」という後悔の気持ちになることもありますが、また現場で気に入らないことがあると、突然スイッチが入ったように相手を罵倒してしまうそうです。

クレームが悪化するパターン

クレームに対して、

  1. 上司に引き継いだ
  2. 毅然とした対応をした
  3. ひたすら謝った

上の3つで比べた場合、クレームが収まったのは1が一番高く、3が一番低いというアンケート結果がでました。

 

クレームの種類別対応方法

実際にクレームが発生してしまった場合に、どのように対応すべきか、UAゼンセンは「悪質クレームの定義と対応のガイドライン」として、クレームの種類ごとに指針を定めています。

長時間拘束型

  • クレーム開始から20分が経過したら専門の従業員にバトンタッチ・録音を開始する
  • 30分が経過したらお引き取りを願い、それでも引き取らない場合は退去を求め、場合によっては警察に連絡する

リピート型

  • 不合理な問い合わせの回数の2回目で注意する
  • 3回目で対応できない旨を伝える
  • 4回目からは窓口を一本化し、迷惑であるため止めるよう伝える
  • それ以降続く場合は業務妨害罪で警察へ通報する

暴言型

  • 大声を止めるよう求める
  • 録音を素早く開始する
  • 侮辱された場合は退去させる
  • あまりに態度がひどい場合は証拠を元に提訴していく

暴力型

  • 複数名で対応する
  • 警察に通報し現行犯として取り押さえる

威嚇・脅迫型

  • 上級従業員に直ちに対応を行わせる
  • 中止を求め応じなければ直ちに警察に通報する

権威型

  • 発生したクレームには対応するが、特別対応には応じない

店舗外拘束

  • 単独での対応はしない
  • 従業員を帰さないという事態になったら、必ず警察へ通報する

インターネット上での誹謗中傷

  • 運営者に当該情報の削除を求める
  • 人権侵害情報の発信者の情報の開示を請求する
  • 自らでの対応が困難な場合は、法務局へ連絡し、法務局からプロバイダへの削除要請を依頼する

クレーム対応は最初の言葉が重要

クレーム対応で大事な初期対応

まずは、謝ることです。

ここで大事なのは、過失を認めて謝るのではなく、限定的に謝ることです。

「ご不快な思いをさせてしまい、申し訳ありません。」

「ご不便をおかけして申し訳ありません。」

「お手間をとらせてしまい、申し訳ありません。」

これらの言葉で、相手に対しての誠意を見せるとともに、言葉尻をとらえて無理な要求をされることを避けることができます。

まとめ

カスタマーハラスメントは、対応した店員一人で最後まで対処しきれることはありません。

組織で対応していくことで収めることができます。

社会全体で対処していくための法整備やガイドラインの作成なども今後の重要な課題となっています。

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