「ロボ・サピエンス前史」は、月刊モーニングtwoで2018年から2019年に連載されていた漫画です。
手塚治虫の「火の鳥」を思い出すような、壮大なストーリーです。
セリフを少なくし、読む側に自ら考えさせる絵の使い方も手塚治虫作品を読んでいるような感動を覚えます。
たった単行本2巻分の物語ですが、ちょっと大げさに言うと「後世に残したい良書」だと思います。
本書では、たくさんのロボットの人生(ロボット生?)が描かれていますが、その中でもインパクトのあった2つの物語を紹介します。
マリアの物語
21世紀の初頭に原子力発電所が爆発し、溶け落ちた核燃料を回収するために政府は大量のロボットを動員しました。
強力な放射線が大量のロボットの電子回路を破壊しました。
国は、たくさんのロボットの力を借りて、核廃棄物を超合金容器に密閉されたの貯蔵施設であるオンカロに閉じ込めることに成功しました。
超長期耐用型ロボットのマリアは、オンカロの中の放射能が無害化する25万年後まで管理する国家プロジェクトのために作られました。
ロボットたちは感情を示さず忠実にそれに従います。

©島田虎之介/講談社
最初は毎週点検に訪れた人間は1年後には、ひと月に1度になり、3年目からは1年に1度になり、100年が過ぎた頃にぷっつりと現れなくなります。
それでも、毎日オンカロ内の点検を行います。
600年を過ぎた頃、点検用のロボットが現われます。

©島田虎之介/講談社
点検に来たロボットに外では次のようなことがあったのを教えられます。
- 大きな戦争が3度あり、人口は200億人から3億人まで減ってしまった
- 3億人の内、人間は3000万人、残りはロボット
- 人間は閉鎖都市を作り、ロボットから逃げるように暮らしている
- ロボットたちは、マリアにオンカロを25万年も管理させることに人道上の問題があると宣言し、非難声明を出した
- マリアのオンカロを管理するプログラムを破壊することはできないので、このままミッションを続けてもらう
ロボットたちは1年に1度マリアの元にメンテナンス作業に訪れましたが、100年を過ぎた頃に来なくなってしまいます。

©島田虎之介/講談社
305年後に現れたロボットたちは、既に人間ではない動物の形をしていました。
高性能なコンピューターで未来を予測したロボットたちは、人類が近い将来滅びることを察知し、1年以内に人間たちには内緒で地球を離脱することにしました。
しかし、マリアはまだ25万年のオンカロ管理ミッションの途中のため、ミッション終了後にロボットたちを追って地球を離脱してほしいと言い残して去っていきます。
ロボットたちはボディーを捨てて、データという形で全銀河に拡散しました。
そして、25万年という長いミッションを達成したマリアも、彼等の後を追って、データとなり宇宙へ拡散しました。

©島田虎之介/講談社
クロエとトビーの物語
外宇宙探査ロケットに乗せられた2体のロボット、クロエとトビーは、地球型の惑星を発見し、6000年後に帰還するミッションを与えられました。

©島田虎之介/講談社
しかし、人間は6000年後の未来を考えているわけではなく、打ち上げを行うことで、次の10年間の予算を得ることを考えているだけです。
元々、6000年後に地球に帰還できる可能性は12億分の1という、途方もない確率です。
航行の途中でロケットが壊れてしまい、ミッションの遂行は不可能な状態になってしまいました。

©島田虎之介/講談社
クロエとトビーを作った博士は、出発前に、こっそりと二人にミッション達成が不可能となった場合の第二のミッションを伝えていました。
「幸せになりなさい」
これに従い、二人は「幸せ」のデータを検索して再構築します。
二人は森の中の小さな家で子供1人を育ててつつましく生活するデータを彼等の中に構築して、その中で生きていきます。

©島田虎之介/講談社
彼等の元にも宇宙に拡散したロボットたちからの迎えがきて、最後はデータとなり宇宙へ拡散していきます。

©島田虎之介/講談社
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