太平洋の北の果て、北米アラスカ沖に浮かぶアリューシャン列島には毎年4万頭ものクジラが集まります。
大量のオキアミが集まるこの地域には、膨大な数の生き物があふれかえり、アリューシャンマジックと呼ばれます。

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冬の間はメキシコ沖の暖かい海域で過ごしたクジラたちは、春になると北上して長い長い旅をします。
しかし、その道中では、クジラの子供を狙ったシャチの群れが待ち構えています。
クジラの子供の半数がシャチに命を奪われてしまいます。
「NHKスペシャル 大海原の決闘! クジラ対シャチ」は、クジラとシャチの命を賭けた闘いを撮影した貴重な映像です。
クジラの赤ちゃんが産まれる場所
メキシコ沖やハワイ近郊、小笠原諸島付近の暖かい海で冬の間にクジラの出産・子育ては行われます。

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1日で500リットルもの母乳を飲み、1月で倍の大きさになります。
その間母親は絶食し、体重は3分の2に落ちてしまいます。
5000キロの大航海へ
春になり、子クジラの身体に脂肪が付いてくると、北の海を目指し5000キロの旅が始まります。
母親はときどきジャンプし、大きな音をたて、子供に自分の居場所を伝えながら広い海を北へ北へと泳いでいきます。

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旅に出て2か月、アリューシャン諸島へ到着します。
春とはいえ、2000mを超える山々には常に雪が積もっています。
アリューシャン諸島にたどり着いた大半のクジラが幅20kmの狭いユニマック海峡を通って、ベーリング海を目指します。

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クジラの天敵シャチの登場
ユニマック海峡でクジラたちを待ち受けるのが、最大の敵シャチです。

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シャチは40km先の獲物の音を聞き分けることができます。
群れの一頭がクジラを見つけると、ヒレを海に打ち付けてクジラの発見を仲間たちに伝え、横一列に並び戦闘態勢に入ります。

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クジラとシャチの戦闘開始
戦闘態勢に入ったシャチたちは、すぐにクジラを取り囲みますが、一気には襲い掛かりません。
母クジラはシャチよりも大きく皮膚も固いため狙いません。
あくまでも子クジラのみを狙います。
隙を見つけて、子クジラに体当たりをして母クジラから引き離します。

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母クジラから引き離された子クジラは上からシャチに抑えつけられて窒息させられてしまいます。

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数分後、動かなくなった子供が浮かんできます。
母クジラはどうすることもできずその場にたたずむことしかできません。

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クジラがかわいそうな映像ですが、シャチも自分たちの子供を育てるために必死です。
数少ない貴重な獲物を仲間たちみんなで分け合って食べて子供を育てます。

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ときには声で獲物が取れたことを知らせ近くにいる仲間たちを呼び寄せて貴重なエサを分け合います。
奇跡の映像
撮影中、一匹のコククジラが母クジラからはぐれて泳いでいました。
シャチはそれを見つけて一斉に襲い掛かりました。
その瞬間、巨大なザトウクジラの群れが大きなうなり声を上げながらシャチに突進してきたのです。

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通常、ザトウクジラが自らシャチに近づくことはありえません。
種類の違うコククジラを守るためにザトウクジラたちがシャチに向かってきたのです。
巨大な尾びれを振り回し、シャチを追い払いました。
海のギャングと呼ばれ、最強であるシャチをクジラが倒したのです。
クジラが子供を守り切る
撮影中、親子クジラが、シャチに囲まれてしまいました。
シャチたちはいつものように親クジラから子クジラを引き離して、海中に押し込んで窒息させようとします。
母クジラは、我が子を守るために子クジラの下に潜り込んで、呼吸をさせようとします。

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自らの呼吸を捨てて、必死で子クジラの下に潜り込みます。
40分もの格闘の末、シャチたちは諦めて、その場を去っていきました。
見事、我が子を守ることに成功しました。
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