株式投資家に最も読まれている本「賢明なる投資家」の内容を簡単にまとめました

賢明なる投資家 投資・金融・会社経営
©ベンジャミン・グレアム/パン・ローリング社

賢明なる投資家」は、1949年に初版され、今なお世界中で読まれ続けている投資のバイブルともいえる名著です。

 

著者のベンジャミン・グレアムは、伝説の投資家ウォーレンバフェットに最も影響を与えた人物だとバフェット自身が語っています。

 

ベンジャミン・グレアムの4つの投資哲学

  1. 投資とは、詳細な分析に基づいて行うものであり、元本を保全して、適切なリターンを上げることと定義する。この条件を満たして満たさないものを投機と呼ぶ。
  2. 将来のことは分からないのだから、投資家は手元資金をすべてひとつのバスケットに入れてはならない。その安全で堅実な範囲を超えて冒険に挑んだ人々は、精神的に大きな困難を背負うことになる。
  3. 投資家と投機家の相違は、その人が相場変動に対して、どのような態度で臨かという点である。投機家の関心事は、株価の変動を予測して利益を得ることであり、投資家の関心事は、適切な証券を適切な価格で取得し保有することである。
  4. 安全域の原則を確固として守ることによって、十分なリターンを得ることが可能である。安全域の原則は、割安銘柄に適応することでさらに明白なものとなる。割安銘柄は、株価がその本質価格よりも安い状態にあるわけであり、その差が安全域である。

第1章 投資と投機

「賢明なる投資家」の第1章では、投資投機の違いについて次のように述べています。

市場のリスクを負わない価格になるまで待ってから買うことはできず、投資家はいつでも自分の保有株には投機的な要因があるということを認識していなければならない。

この要素を最小限に抑えると共に、いつやってくるか分からない来たるべき逆境に対して、財政的そして心理的に備えるのが投資家の仕事である。

信用取引をする素人は、そのこと自体が投機であることを認識すべきである。

人気株を買う人はすべて、投機またはギャンブルをしている。

第2章 投資家とインフレーション

債券や、金、不動産などに比べて株式投資による配当金と株価上昇はインフレーションに対する防衛手段になりえる。

しかし、インフレーションと株式価格に必ず正の相関関係があるわけではなく、物価が大きく上昇した年でも株価が暴落することは、ままあることです。

大事なことは手元資金をすべてひとつのかごに突っ込んではいけない、株式だけではなく他の資産にも配分しておくということです。

第3章 株式の歴史

1871年までさかのぼって、株式市場の平均価格を調べると、大きな下落を何度も繰り返しながらも長期的な株価上昇局面を迎えて株式市場は成長していっていることが分かります。

株価がどのような成長曲線を描くのかは、各国の経済や地政学的な状況によって大きく変わるため、参考にならない部分も多いですが、大切なのは長期で見れば右肩上がりで成長し続けているということです。

第4章 一般的なポートフォリオ戦略

リスクを取る余裕のない人々は、投資資金に対して相対的に少ない収益で満足すべきであるという考え方は間違いです。

投資家の期待できる収益は、その人がどれだけのリスクを取る覚悟があるかに比例するのではなく、投資のためにどれだけの知的努力を注げるかにかかっているのです。

第5章 防衛的投資家のための株式選択

先の章で述べたとおり、株式にはインフレによる資産価値の目減りから投資家を守る効果を期待できることに加えて、相対的に高い収益を得られるメリットがあります。

株式投資における、ベンジャミン・グレアムが提唱する投資方法は以下の4つです。

  1. 十分な、しかし過度にならない程度の分散投資を行うこと。10~30銘柄くらいが望ましい
  2. 財務内容の良い有名な大企業を選ぶこと
  3. 長期にわたる継続的な配当金支払いの実績があること
  4. 過去7年の平均企業収益に照らして支払うべき価格の上限を決めること

4の基準によりほとんどの成長株が排除されることになります。

なぜなら、成長株は、未来の成長予想を元に株価が決まるため、過去の成長よりもはるかに高い価格が付いているためです。

比較的人気のない、ゆえに合理的な株価収益率で入手できる大企業群こそが、一般大衆投資家にとって健全な投資分野であると考えます。

第6章 積極的投資家の分散投資 消極的な方針

普通株式の投資以外にも資金を振り分ける余裕のある投資家が行うべき分散投資の方法について述べた章です。

その中でも、第6章では消極的な方法について記載し、次の第7章で積極的な方法について説明しています。

  • 劣後債や優先株は、それらが割安価格でなければ手を出すべきではない
  • 外国政府債は利回りがいくら魅力的であっても避ける
  • 転換社債や新規発行証券には用心する
  • 優良課税債券と良質な非課税債券との間で債券投資を検討すべきである

第7章 積極的投資家の投資 積極的な方針

積極的な投資家においては、市場平均より高いリターンを求めることになります。

そのために心がけることが2つあります。

  1. 客観的かつ整合性のある基準からみて、根本的に堅実であること
  2. 大多数の投資家や投機家のやり方とは異なっていること

 

第8章 投資家と株式市場の変動

実際に株式を購入するタイミングについて、2つの方法を提唱しています。

  • タイミング手法

市場の動きを予想して、今後株価が上向きそうなときには買い付け(保有を続け)て、下る見通しのときには売る(買い控える)。

  • プライシング手法

本来の価値以下の値が付いているときに買い、実質価値以上に値が上がったら売る。

第9章 投資ファンドへの投資

平均的な投資家が過去10年間に、投資ファンド株に集中投資した場合と、普通株を直接買った場合を比べると、より得をしたのは前者でした。

平均的な個人投資家は、気が付くと投機的になり、多大な損失を被りやすくなります。

その意味で、ファンドを買っておいたほうがパフォーマンスが良かったのです。

第10章 投資家とそのアドバイザー

証券投資の際に投資アドバイザーに助言を求めることは、どうしたらお金が儲かるのかを聞いているのと同じです。

普通ではあり得ないことを求めているのです。

投資家は、知識や経験を積んで他人のアドバイスに対して自分で判断できるようになることが大切です。

第11章 一般投資家のための証券分析

証券分析とは株式や債券の評価や分析を言い、財務分析とは証券分析に含め投資方針の決定や一般の経済分析まで含みます。

  • 成長株の評価方法

価値=現在の(標準的)収益×(8.5+予想年間成長率×2)

一株当たり利益に関して

年間収益を気にしすぎないこと

もし短期的な数字を気にするのであれば一株当たり利益に隠れた落とし穴に警戒することです。

実際によくある2つの落とし穴のケースを紹介しています。

  • 普通株に転換可能な社債を多く発行しており、実際に転換されてしまったときに一株利益は大幅に減少するケース
  • 特別損失を特定の年に集中させることによって、利益額を増やしたり減らしたり、企業側の意図的に上下させているケース

第13章 上場四企業の比較

第13章では、グレアムが無作為に選んだ以下の上場企業4社の株を実際に比較してみました。

  • エルトラ社
  • エマーソン・エレクトリック社
  • エメリー航空貨物運送社
  • エムハルト社

財務諸表の分析を行いますが、そこでグレアムがあげた重要な7つのポイントがあります。

  1. 適切な規模
  2. 財務状況が十分に良い
  3. 最低過去20年間、継続的に配当がある
  4. 過去10年間、赤字決算がない
  5. 一株当たり利益が、10年間で最低3分の1以上伸びている
  6. 株価が純資産価値の1.5倍以下
  7. 株価が過去3年の平均収益の15倍以下

第14章 防衛的投資家の株式選択

前章であげた株式選択の7つのポイントをさらに詳しく解説しています。

1企業の適切な規模

大体の目安として、製造業では年間売上が10億ドルいじょう、公益企業では総資産5000万ドル以上が望ましい。

2十分に健全な財務状況

製造業の場合、流動資産が流動負債の最低2倍あること。

また、長期負債が運転資本を越えないこと。

3収益の安定性

過去10年間、毎年普通株の収益があること。

4配当歴

少なくとも過去20年間において無配当の年がないこと

5収益の伸び

過去10年間において初めの3年間と最後の3年間の平均を比べて、一株当たり利益最低3分の1以上伸びていること。

6妥当な株価収益率

現在の株価が過去3年間の平均収益の15倍を上回らないこと。

7妥当な株価純資産倍率

直近の報告書において、現在の株価が簿価の1.5倍以下であること。

ただし、収益の15倍以下であれば、それに伴って簿価比率が高くても構わない。

第15章 積極的投資家の株式銘柄選択

第15章では、グレアムが一般投資家の投資における悲しい現実を突きつけてきます。

  • 全体平均よりも利益のあがるポートフォリオを組める確率は低い
  • 普通株のみを組み入れたファンドの長期実績は、市場平均以下の成績しか収めていない

第16章 転換証券とワラント

普通株に転換する権利を持った、いわゆるストック・オプションは、普通株の価値を希薄化させます。

このリスクを見積もるために、全てのオプションが行使され普通株になったときの一株当たり利益をあらかじめ計算して最低額を想定しておくことが大切です。

第17章 特別な4社の例

1ベン・セントラル鉄道

1970年に破産した鉄道会社ですが、特殊会計操作による奇妙な処理を行っており、投資家たちは破産するまで全く気付かず、市場でも高すぎる株価で取引されていた銘柄です。

2リング・テムコ・ボート社

急速に成長し、その勢いに乗って銀行が無制限に融資を行った結果、とんでもない負債額を抱えることになり、成長が鈍化した瞬間に債務超過に陥り破産した企業です。

売上の伸びに対する負債の増え方をきちんと見ていれば、危険な企業であったことは想定できたはずです。

3NVF社

7倍の規模のシャロン・スチール社を買収しようとして多額の負債を抱えた結果、事業でも赤字に陥り破産した会社です。

4AAAエンタープライズ

トレーラーハウスの販売で急拡大した企業です。

カーペットの小売販売に手を出して、巨額の損失を計上しました。

 

第18章 八組の企業比較

無作為に選んだ8組の企業の財務諸表を見ながら、どこに注目すべきかを解説している章です。

第19章 株主と経営陣 配当方針

かつては、高配当を行う企業が優良企業であり、低配当の企業は株価も低迷していました。

しかし、最近では、わざと配当を抑える企業は強力な成長企業であり、こうした企業の株が投資家に認められています。

第20章 投資の中心的概念「安全域」

グレアムは堅実な投資の極意は「安全域」であるといいます。

安全域については、冒頭の「ベンジャミン・グレアムの4つの投資哲学」の4番目で説明しています。

この「安全域」こそがグレアムにとって投資で勝つために一番重要であるという結論なのです。

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