日本の国宝や重要文化財を修復するプロ文化財修理技術者・鈴木裕

プロフェッショナル仕事の流儀 文化財修理技術者 鈴木裕 ドキュメンタリー
©NHKエンタープライズ

福岡・九州国立博物館で働く文化財修理技術者・鈴木裕(すずきゆたか)

日本の宝である「紙」の国宝重要文化財を甦らせるプロフェッショナルです。

鈴木裕

©ナショナルジオグラフィック社

 

修復

©ナショナルジオグラフィック社

だけではなく、屏風襖絵などあらゆる「紙」をよみがえらせてきました。

プロフェッショナル 仕事の流儀 仕事は体で覚えるな 文化財修理技術者 鈴木裕の仕事」は、日本の紙修復の第一人者を徹底的に掘り下げたDVDです。

2007年、当時55歳の姿です。

鈴木裕の仕事場

鈴木裕が勤める福岡、大宰府にある九州国立博物館は、数々の重要文化財を保存する日本有数の施設です。

鈴木裕の仕事場は、その博物館の一番奥の部屋です。

京都、奈良から集められた重要文化財の修復のプロたちが集まっています。

 

鈴木裕はそのリーダーです。

部屋の中では重要な物を守るため、アクセサリー類を付けることは禁止、女性の化粧も禁止されています。

修復には長いもので10年かかることもあります。

宗家文書の修復

NHKのカメラが鈴木裕の仕事を追いかけていたときにちょうど修復を行っていたのが、国の重要文化財である宗家文書です。

宗家文書

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長崎県対馬に伝わる、300年に渡る朝鮮との交易がつづられた貴重な資料です。

国の重要文化財に指定されています。

このように、国の歴史に欠かせない重要書類の修復依頼が次々と鈴木裕の元に運ばれてきます。

紙の修復作業

紙の修復作業では、まず「裏打ち」という作業を行います。

修復する紙の裏側に霧吹き水を吹きかけます。

裏打ち

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次にそのぬれた部分に一部の隙もなく和紙を貼り付けます。

乾くと波打っていた紙が真っ直ぐになります。

 

次に、穴が開いたりして修復が必要な箇所に修復用の和紙をあて、水が出る筆で修復用和紙をちょうどいいサイズに切り取ります。

 

修復用の和紙のけばの部分にのりを付け、穴をふさぎます。

穴ふさぎ

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けばの部分を削り取っていきます。

けば

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日本最古の印刷物の修復に挑戦

撮影中、鈴木裕の所へ、1200年前の経典、百万塔陀羅尼(ひゃくまんとうだらに)の修復の依頼が届きました。

百万塔陀羅尼

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百万塔陀羅尼は日本最古の印刷物です。

顕微鏡で使われている紙の材質を調べたところ、補修に使える紙が存在しないことが分かりました。

自ら修復用の紙を作るところから始めます。

楮

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経典の色や厚さ、密度に合わせて、どうすれば元の紙に近づくかを考え続けながら作業を行います。

修復のために妥協せずに徹底的に元の材質に近づけるのが鈴木裕の仕事です。

鈴木裕の歴史

鈴木裕は、高校生の頃、画家を目指していました。

美術大学を受けますが、受験に失敗しました。

浪人時代、京都の美術館で見た美術品に衝撃を受け、文化財に関わる仕事がしたいと思うようになると思います。

すぐに京都の修復工のところへ行き弟子入りしました。

必死で技術を磨き、30代になると大量の古文書の修復を任されるようになります。

しかし、「これが望んでいた仕事なのか」と思うようになります。

当時の古文書の修復は、紙の穴をふさぐだけで、単純作業を繰り返すだけのものでした。

42歳のとき、山形米沢藩にある上杉家文書の修復プロジェクトの現場リーダーを任されることになります。

上杉家文書

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文化庁からの依頼は「全てを当時の姿に戻してくれ」でした。

やっと、やりがいのある仕事を見つけられた気がしました。

徹底的に紙に向き合い、性質の近い紙を探し求めました。

上杉家文書は、上杉家が受け取った手紙のため、全て紙質がバラバラでした。

当時の紙すきの道具を再現しなおし、一から紙作りを始めました。

あまりの膨大な作業に、仲間から反対されたこともありました。

 

2年後、見事によみがえった上杉家文書は、国宝に認定されました。

 

鈴木裕が自分の進むべき道を見つけた瞬間でした。

鈴木裕の名言

「考えながら修復する。体が覚えたことの繰り返しで修理することはありえない。」

「技術っていうのは背景のある奥深いものでなければならない。」

プロフェッショナルとは?この質問には次のように答えました。

「毎日同じ慣れた仕事であっても、いつもこう、新鮮な気持ちで向かいあえる、新鮮な気持ちで仕事ができる。そういった人がプロフェッショナルじゃないかなと思います。」

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