中世ヨーロッパの人々にとっては、ドラゴンはオオカミなどと同じように実在する怪物だと考えらえていました。
西暦793年、イングランドの聖なる島リンディスファーンの修道院は、襲撃を受け、炎と血で赤く染まります。
このとき、空にドラゴンがいたという書物がいたるところに残されています。

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バビロニア神話に登場するティアマトが最も古いドラゴンだと考えられています。
記事の元となった資料:ナショナル ジオグラフィック DVD「ドラゴンとの戦い 伝説のモンスターは実在したのか?」
8世紀に広がったドラゴンの物語
8世紀のアングロサクソン人にとって、ドラゴンは実在する怪物でした。
叙事詩ベオウルフでは、人間に宝を盗まれたドラゴンが、仕返しに人間の国に大きな災いをもたらします。
スカンディナビア王のベオウルフは、ドラゴンに勝負を挑みます。
ベオウルフはドラゴンの牙による毒により致命傷を負いますが、最後の力を振り絞ってドラゴンを倒します。

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なぜベオウルフが広がったのか
アングロサクソン人は、墓の中の地下の洞窟に財宝を蓄える習慣がありました。
そこで、ドラゴンを財宝の守り神として物語に登場させ、墓荒らしたちが財宝に近づけないように、この話を口伝えで広げていきました。
このベオウルフの物語を書物に書き記したのが、修道院の修道士たちでした。
これにより聖書とドラゴンの物語がつながっていきました。
リンディスファーンのドラゴンは何だったのか?
リンディスファーンを襲ったのは、異教徒たちでした。
北欧スカンディナビアからバイキングが攻めてきたのです。
北欧でもドラゴンの神話が広がっており、それをモチーフにした巨大な船がドラゴンの襲来としてリンディスファーンの修道士たちを恐れさせたのです。
北欧神話シグルズ
ファフニールは、父親を殺し、財宝を地下に隠しました。
強欲なファフニールはドラゴンに変身してしまいました。

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シグルズはファフニールの弟が作った剣を持ってファフニールに挑みます。
シグルズは地面に穴を掘り、ファフニールを待ち、下から剣で突き上げて倒しました。
ドラゴンの呪いにより、黄金を手にした者は不幸が訪れます。
シグルズは黄金にとらわれ、ドラゴンの呪いにより最後は死んでしまいます。
バイキングのその後
その後、バイキングであるノルマン人対アングロサクソン人の戦いが始まります。
両者ともにドラゴンの神話が広がっていた地域のため、ドラゴンをモチーフとした旗で戦いました。
やがてノルマン人がヨーロッパを制覇します。
ノルマン人はワイバーンを倒したコニャーズのようなドラゴン討伐の物語を作り、自分たちの支配を正当化しました。
これにより、ドラゴンは畏怖される存在から、討伐されるべき怪物へと変化していきました。
中世になってもドラゴンがいた
11世紀になり現れた聖ヨハネ騎士団は、イスラム教徒に追われ、聖地エルサレムを去ります。
ロードス島に逃げた聖ヨハネ騎士団は、島を要塞化しました。
このとき、聖ヨハネ騎士団はドラゴンと戦い、多大な損害を被ったという歴史書が残されています。
家畜や農民を襲うドラゴンを何とかしなければならないと、西暦1300年代の聖ヨハネ騎士団のマスター・ゴゾンが立ちあがります。

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ゴゾンは実在の騎士であり、その墓にはドラゴン・スレイヤーと書かれています。
ゴゾンが持ち帰ったドラゴンの首は、ロードス島の門に飾られていましたが、それは巨大なワニの首だったという説もあります。
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