アメリカの水産業界でその名を轟かせる洋上加工船アラスカ・オーシャン号。

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アラスカ・オーシャン号がスケソウダラを釣り上げ、船内で加工を行い生み出されるタラコは絶品です。
世界有数のシアトルの市場で、9年連続で最高値を記録し、世界中の水産会社のバイヤーたちからは絶大な信頼を集めています。
その船の加工生産部門の100人を超える部下を束ねるファクトリー・マネージャーを勤めているのが、吉田憲一という男です。

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記事の元となった資料:DVD「プロフェッショナル仕事の流儀 ファクトリーマネージャー吉田憲一の仕事」
荒くれ者だらけの職場
部下は全て外国人です。アメリカ人、フィリピン人など多国籍な職場です。
その日暮らしで、定職に就かない者たちの集まりで、一筋縄にはいきません。
それでも、7割の部下が再び吉田の元で働こうと付いてきます。
吉田憲一の仕事
スケソウダラが上がると、吉田憲一は、すぐさまタラコの割合、卵率を調べます。
体長の4.9%を超えなければ優良なタラコではありません。
優良なタラコでなければ、漁場を変えるよう、吉田が船長に指示を出します。
吉田の部下140人が24時間交代でフル稼働しています。
タラコの鮮度が落ちないように細かく指示を出します。
タラコは色、形、大きさによって17に選別します。
非常に繊細な仕事ですが、吉田は部下に対し、あえて細かい指示は出しません。
選別が間違っているときは、何も言わずに突き返します。
全てを教えずに考えさせることを重視しています。
真摯に仕事に向かっている者には、次々と責任のある仕事を与えていきます。
吉田憲一はすばらしいリーダーだと荒くれ者たちが彼に従います。
過去の壮絶な経験が偉大なリーダーを作った
吉田憲一は、高校時代は柔道部で活躍しました。
2年生でインターハイに出場するほどの実力できた。
大学卒業後、食品なら食いっぱぐれはないだろうと、水産会社に就職しました。
仕事は、加工船でのタラコの選別。
魚を傷つけずにさばく技術を身に付けることに没頭しました。
30歳の若さで技術力の高さから製造責任者に抜擢されます。
充実した毎日でした。やがて娘にも恵まれました。
30歳の秋、船の中機械の調整をしているときに、左腕が巻き込まれました。
2度の手術を受け、自宅で回復を待ちますが、4か月後、「もう船には乗せられない」と会社から言われてしまいます。
もう一度船に乗りたいと訴え続け、2年後、ようやく乗船が認められました。
しかし、左腕がない状況では、手本を見せようにも魚をさばけない。カゴ一つ持つこともできない。
イラついて部下を怒鳴り、周りとの関係も悪化しました。
でも、諦めませんでした。
見本を見せられなくても部下に指示を出せる方法を必死で考えました。
できるだけ具体的に指示を出し、やる気の度合いで部下を評価できるように必死で観察しました。
やがて、船内の雰囲気は変わり、指示を真剣に聞く部下が増えていきました。
吉田憲一の名言
「常にやることはあるんですよ。それを考えているか考えていないかの差。今、何をやるか。」
プロフェッショナルとは?という質問に次のように答えました。
「結果に責任をもつために精一杯努力する。その結果に対してですね、本当の喜びと悔しさ、これがわかる人だと思います。」
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