戦後の日本の希望の光だった南極観測隊(プロジェクトXより)

南極観測 ドキュメンタリー
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昭和31年11月8日、東京の晴海ふ頭から、大歓声に見送られながら、南極観測船「宗谷」が出発しました。

宗谷

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当時は、まだ世界のどの国も南極大陸に到達できておらず、未知の土地でした。

日本はまだ戦後の傷が癒えておらず、社会は暗いムードでした。

そんな中、全国民の期待を背負い、世界への挑戦として出発したのが南極観測隊でした。

 

参考資料:プロジェクトX「『宗谷』発進・第一次南極観測隊」~日本人が一つになった880日~

世界から反対された日本の参加

東京大学で教授をしていた永田武の元に国際地球観測会議からの手紙が届きます。

永田武

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世界各国共同で南極観測を行うというプロジェクトの会議に永田武は参加します。

会議では、世界の各国代表から、「日本には参加する資格がない。」と言われました。

日本には南極に行く力はないと、戦勝国から見下されていました。

永田武は、「日本は必ず南極観測に参加する」と宣言しました。

日本に割り当てられた観測地が不可能だった

大蔵省から資金の拠出を拒否された永田武のもとに、朝日新聞が声をかけます。

新聞で大々的に宣伝し、募金を募ったところ、全国からお金が集まりました。

そして昭和30年11月4日、国が動きました。

南極観測が閣議決定されたのです。

しかし、衝撃的な事実が発覚します。

日本に割り当てられた基地の設営場所は、南極大陸の東北にあるプリンスハラルド海岸でした。

南極大陸の中でも、最も厚い氷で覆われており、欧米諸国が7度も挑戦し、たどり着けなかった場所です。

日本中が総力を挙げて船を作る

南極観測に使う船は、太平洋戦争中に何度も出撃し、沈没せずに戻ってきた宗谷が使われることになりました。

南極でも使えるように風力発電機を作って「ただでいいから使ってくれ」と持ち込んだ男がいました。

HONDAの創始者、本田宗一郎でした。

寒さの中でもバッテリーが持つ小型受信機を無料で作ったのは、東京通信機器、のちのSONYでした。

南極での拠点となるプレハブ住宅を作るのは、東京タワーを作った竹中工務店でした。

1000の企業が参加した、まさに、国力をあげてのプロジェクトでした。

2万キロの旅に出発

そして、いよいよ出発の日、隊長の永田武は大群衆に毅然と言いました。

「冷静に、科学的に、合理的に、全ての任務を尽くしてきます。」

南極まで2万キロの運命の航海が始まりました。

今まで味わったことのない荒波の中を進みます。

百戦錬磨の海上保安庁の男たちが船酔いで吐きまくりました。

そして、南極近くへたどり着き、船は氷の海をかき分けながら進みます。

南極の氷

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10日後、びくともしない巨大な氷山にぶつかります。

ダイナマイトで爆発させる奥の手に出ますが、それでも崩れません。

それでもあきらめずに氷の海にダイナマイトを入れたところ、氷山に細い割れ目ができました。

その細い割れ目をかき分けて、命がけの前進をします。

地獄の観測開始

昭和32年1月24日、プリンスハラルド海岸にたどり着きます。

そして、さっそく基地の建設が始まります。

基地の建設

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当初は夏の内に基地を建設した後、一度日本へ戻り、翌年に再度南極へ来て観測を行う予定でした。

 

しかし、11人の隊員が、このまま南極へ残って越冬調査を行いたいと申し出、命がけの観測が始まりました。

昭和32年3月、風速50mのブリザードで観測用の小屋の一部が吹き飛ばされる事件が起きます。

みんなが死を覚悟しました。

朝起きると、地面が割れていて、食料を置いていた倉庫ごと流されていたこともありました。

ストーブの火が新聞紙に燃え移り、測量機や観測記録が全て燃えてしまったこともありました。

それでも各々がテーマを見つけて、観測に勤しみました。

南極の気候の観測、ペンギンの観測、オーロラの観測など、それぞれが一生懸命に働きました。

しかし、食料が尽き欠けていました。

昭和33年1月、食料はほとんどなくなっていました。

観測隊を迎えに来る船がいつ来るのか、それに隊員たちの命がかかっていました。

 

その矢先、観測隊を迎えに向かっていた船から、基地まで200kmの地点で氷に阻まれているという無線が届きます。

パイロットの岡本貞三が、小型の飛行機に乗って観測隊を助けに行くことを決心します。

岡本貞三

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突風にあおられれば飛行機ごと飛ばされる中、次々と観測隊を救助していきました。

世界を驚かせた日本の観測の成果

無事日本に戻った観測隊は、世界を驚かせました。

手探りで集めた石は、南極が地球最古の大陸であることを示していました。

オーロラ発生の謎の解明の元となるデータもありました。

世界に日本人の底力を知らしめた瞬間でした。

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